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ベトナムのセキュリティ事情(11):オフィスや工場で発生する内部トラブル

2016/04/23 06:00 JST配信
(C) ALSOKベトナム
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 皆さん、こんにちは。ALSOKベトナムの安立です。

 前回までは、オフィスや工場で発生する窃盗への対策として、警備の視点から対策を説明してきました。今回は、オフィスや工場で日々発生する社内トラブル(内部不正など)について説明します。

社内トラブルランキング

 下記は、ベトナムにおける社内トラブルランキング(弊社調べ)です。正確な統計数字というものは存在しないため、あくまで弊社調べであることをご了承ください。

1位:逆恨み
業者変更や不正を指摘・報告した際などに逆恨みされ、傷害事件に発展する。

2位:持ち出し
ワーカーやスタッフが窃盗品(材料・工具など)を持ち出す。

3位:結託
従業員と業者・警備員などが結託して犯罪行為(完成品の持ち出しなど)を犯す。

4位:賄賂(キックバック)
調達担当者が取引業者から賄賂(キックバック)を徴収する(表面化しないことが多い)。

5位:喧嘩
ワーカー同士の些細な問題から襲撃事件に発展する。

 会社の経営者や工場の管理者の方であれば、いずれも経験されたトラブルばかりだと思います。2位の「持ち出し」に関しては、これまでのコラム記事で対策を説明してきました。

 しかし、それ以外のトラブルに対しては残念ながら特効薬のような対策は存在しません。いずれもケースバイケースで対応しなければならないのが現状です。その中で、弊社がお客様から相談いただいて対応した事例を参考としてご紹介いたします。

逆恨みのケース

 工場のワーカーやスタッフの採用面接後に、不採用を理由に人事担当者が逆恨みされトラブルになるケースがあります。「仲間を連れて工場に乗り込んでやるぞ」という強迫メールを送り付けたり、人事担当者の帰社時に待ち伏せて複数人で暴行を加えたりという事件が過去にありました。

 こういうケースは、相手の特定が容易ですし、証拠が残る可能性が高いので、比較的対応は容易です。暫定的な対応としては、しばらく人事担当者を社有車で通勤させたり、警備員の増員で対応します。相手の特定が出来れば、公安に通報することも考慮します。

結託のケース

 3位の結託は、非常にやっかいな問題ですが、具体的な事例を説明します。

 工場などへ出入りするトラック運転手と工場側担当者が結託して、工場の資材やガソリン・ガスなどの燃料を搾取する事例です。

 手口としては単純で、工場などに入構する際(写真1)に、あらかじめトラックの重量を重くしておき、積み荷の重量をごまかすものです。重量をごまかす手段は、水を入れた複数個のポリタンクをトラックに積んでおき、工場に入構してからこの水を排水溝に流します。その後、流した水と同量の資材やガソリン・ガスなどの燃料を積んで出構します(写真2)。

 以下に、弊社がお客様に提示している対策の例をご紹介します。少し専門的になりますが、実際に現場で効果があった対策です。

逆恨みと結託の対策例

1.トラックが入構する際、タンク搭載のトラックの場合は、警備員または担当者によるゲートでの手続きとトラックのタンク容量メーターの確認を徹底する。あわせてトラック周りに不要物が積載されていないか確認する。

2.トラックの入出構の際は必ず写真を撮る。撮影のポイントは、トラックに不要物を載せられそうな箇所、タンク容量メーター部分。工場のスタッフやドライバーにチェックされているという意識を持たせる効果もある。

3.入構時の計量後、速やかに荷物を積載し、計量を実施し、滞りなく出構するようなルールを構築する。入構時に計量を行い、積載するまで待機する状況であれば、改善の余地あり。

4.監視カメラを増設する。監視されているとわかるような場所に設置することが必要。夜間における入出荷が多い場合は、トラックの動線に照明を増設して明るくする。これは、窃盗を実行する意識を減少させる効果がある。

5.犯罪行為であることを意識付けるため、発生した盗難事件の内容を注意事項として、工場のスタッフやドライバーが見える場所に掲示する。ベトナムにおいては、意外に効果の高い方法。

 上記のような対策も効果がありますが、最も大切なのは、どこまで継続的に徹底出来るかになります。工場の管理者や外部の専門家による、不定期な事前通知無しの監査や巡察を行うことで事件・事故の発生率を抑えることが出来ます。

賄賂(キックバック)のケース

 4位の賄賂(キックバック)は、コンプライアンスを重視する日系企業にとって頭の痛い問題です。

 ベトナムでは、工場やオフィスに限らず様々な場面で「手数料」の名目で賄賂(キックバック)を要求されることが日常茶飯事です。特に、オフィスや工場の外で発生することが多いため、証拠をつかむことは困難です。

 対策として、例えば購買に関してであれば、相見積りの取得を徹底したり、担当者をローテーションすることで、会社側が「見ている」という意識付けをすることが出来ます。

 また、日本ではかなり普及してきましたが、最近のIT技術を駆使して、社内外で交わされているメールの内容を監視し、それらしいキーワードを抽出することも可能になってきました。

 次回は、このコラムの最終回です。ベトナムにおける警備会社や警備員の実情を説明し、どのように付き合って行けばよいか、どのように活用すればよいかを説明します。

著者紹介
安立 光孝 (あだち みつたか)

ALSOK (VIET NAM) CO.,LTD  代表取締役社長

コンピュータメーカーで17年間システムエンジニアとして従事。製造業における生産管理システムやファクトリオートメーションシステムの構築を担当。1998年から4年間、米国シリコンバレーに駐在し、ITセキュリティのベンチャー企業を発掘、日本市場への参入を支援。2007年に綜合警備保障株式会社(ALSOK)入社。新規事業の「情報警備」事業を立ち上げ、2014年4月より現職。

ウェブサイト:https://www.alsok.com.vn/

ベトナムにおけるセキュリティー事情
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