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【第2回】日本から世界へ!拡大する一村一品運動

2018/06/11 08:55 JST配信

こんにちは、青年海外協力隊の山田邦永(やまだくにはる)です。2017年10月より、ベトナムの非政府組織(NGO) VIRI で、ハノイを拠点に 活動 しています。

フェアトレード製品としての承認取得は、一村一品運動において開発された製品の付加価値を向上するための1つの手段としても活用されています。コラム第2回では、一村一品運動について紹介します。

大分県発祥、「一村一品運動」のコンセプト

一村一品運動 は、1979年に大分県知事に就任した、故・平松守彦さんが提唱・主導してきました。大分県内各地で過疎化が進行する中、行政依存傾向を払拭し、地域住民の自主自立精神の下に地場産業を興すことを目指し、一村一品運動が展開されてきました。

一村一品運動には、3つの原則があります。

1. 「ローカルにしてグローバル」
地域の文化と香りを持ちながら、全国、世界に通用する「モノ」をつくる。
2. 「自主自立・創意工夫」
地域住民が商品を決め、創意工夫を重ね、磨きをかけていく。行政は、技術支援やマーケティングなど側面から支援する。
3. 「人づくり」
先見性のある地域リーダーとともに、何事にもチャレンジする創造力に富んだ人材を育てる。

ベトナムにおける一村一品運動「OCOP」

OCOPがベトナム政府の重要施策に

大分県で始まった一村一品運動の英語名はOne Village One Product、略称はOVOPです。ベトナムにおいては、One Commune One Product(OCOP)の名称の下、日本のOVOP等の前例に倣いながら、2013年より東北部 クアンニン省 で始まりました。その後、ベトナム全土にOCOPが展開され、2018年4月時点で全国63省市のうち60省市がOCOPに参加しています。

そして2018年5月7日、2018~2020年のOCOPについて定めた 首相決定490号(490/QD-TTg)が交付 されました。総事業費は約45兆VND(約2173億円)で、農業・地方開発省が他の省とともに、ベトナムにおけるOCOPを強力に推進していきます。

ベトナム草の根民間団体「I-OVOP」の設立準備中

ベトナム政府の大きな施策の決定がなされる一方、草の根レベルでOCOPを推進していく民間団体、国際OVOP(International One Village One Product=I-OVOP、仮称)の設立準備が進んでおり、2018年の夏頃までに設立の認可が得られる見込みです。設立後は、現在 VIETCRAFT の代表であるレ・バー・ゴック氏が会長に就任する予定です。

国際一村一品交流協会 内田正理事長のベトナム訪問

ベトナムにおけるOCOPの推進及びI-OVOPの設立の裏には、大分県に本部を構える国際一村一品交流協会の強力なサポートがあります。本協会の内田正理事長が2018年5月13日~21日までハノイ市を訪問していました。訪問期間中、内田理事長は、 モア・プロダクション・ベトナム三井住友銀行ハノイ支店イオンモール・ベトナムVPバンクVTV 等を訪問し、一村一品運動のコンセプトやベトナムにおけるOCOPの現状等を共有しました。

左より、グェン・ティ・トゥ・チャン氏(VIRI プロジェクトスタッフ)、レ・バー・ゴック氏(VIETCRAFT 代表)

勝恵美氏(モア・プロダクション・ベトナム CEO)、内田正氏(国際一村一品交流協会 会長)、筆者(青年海外協力隊)(撮影:2018年5月)

また内田理事長は、 ホアビン省 人民委員会副代表、同省カオフォン県代表、カオフォン県オレンジ生産協働組合代表らと面会し、農村部の持続可能な発展のためにOCOPを推進し付加価値のある商品を開発することの重要性等を説明しました。またカオフォン県のオレンジ農家の視察もしました。

ホアビン省カオフォン県オレンジ農園にて、生産協働組合代表トゥ・クアン・ハー氏(右から3人目)と

握手をする内田正氏(右から4人目)(撮影:2018年5月)

世界に広がる一村一品運動

台湾のOTOP

台湾では One Town One Product (OTOP)が展開されています。 OTOP製品 はデザイン性が非常に優れているのが特徴です。またOTOPのロゴには深い意味が込められています。1つ目の「O」は向かい合って微笑みながら乾杯する2人、2つ目の「O」は一緒に飛び跳ねて遊ぶ気の置けない間柄の2人を意味し、またこの2つの「O」の形は製品の外観も象っています。「T」は台湾最高峰の玉山を象徴し、イノベーションと企業家精神への飽くなき挑戦を意味します。「P」の足の部分は波を掻き分けて進む船を、「P」の頭の部分は舵を取る船頭を象っています。

OTOPを指揮するコーポレート・シナジー・デベロップメント・センター

(Corporate Synergy Development Center)の理事と筆者(撮影:2018年4月、台湾市内)

パキスタンのAHAN

パキスタンでは Aik Hunar Aik Nagar (AHAN : ウルドゥー語で一技能・一地域の意)が展開されています。AHANは、新たな雇用機会を創り、パキスタンの地方の貧困をなくすため、本部のあるラホール、並びに支部のあるカラチ、ペシャワール及びクエッタを起点に、2007年より展開されています。AHANは日本の一村一品運動をパキスタンの現状に合わせて現地化しながら取り入れており、過去に大分県の国際一村一品交流協会をパキスタンに招待して直接指導を受けた経験もあります。

AHAN製品を含むパキスタン製品の交易を担当する在ベトナムパキスタン大使館職員と筆者

(撮影:2018年5月、ハノイ市内)

まだまだあります!世界の一村一品運動

数多くの国で、国によっては現地語の名称で、OVOPが展開されています。

・マラウイ:One Village One Product

・ラオス:One District One Product

・タイ:One Tambon One Product(Tambon:集落)

・マレーシア:Satu Daerah Satu Industri(マレー語で一地区・一産業の意)

・コスタリカ:Un Pueblo Un Producto(スペイン語で一村・一品の意)

・キルギス:Бир айыл Бир Продукт (キルギス語で一村・一品の意)など

各国の一村一品運動のロゴ

I-OVOPコンファレンス 及び I-OVOPエキシビション

現在設立準備中のベトナムの民間団体I-OVOPは、ベトナムにおいて草の根レベルでOCOPを推進していくだけでなく、世界各国で繰り広げられている一村一品運動のプラットフォームとなります。2019年4月、ホーチミン市において、世界各国の一村一品運動に関わる人、情報、そして製品が一同に集結するI-OVOPコンファレンス及びI-OVOPエキシビション(仮称)が計画されています。

最後に

私が青年海外協力隊としてベトナムで活動してい任期中に、ベトナムでOCOPを強力に推進する首相決定がなされ、これから次々に生まれてくるであろう様々な可能性に、非常にわくわくしています。VIRIの一員として、また青年海外協力隊の一員として、OCOP及びI-OVOPを通してベトナムの地方経済の活性化に最大限貢献できるよう、尽力します。

著者紹介
青年海外協力隊 山田邦永
ベトナムのNGO、VIRI で、ハノイを拠点に活動中の青年海外協力隊隊員が、彩り豊かな「ベトナム・フェアトレードの旅」へと皆さまを案内します。VIRIは世界フェアトレード機関(WFTO : World Fair Trade Organization)から国際フェアトレード組織として認められたベトナム唯一の団体です。

著者略歴:1983年生まれ。愛知県出身。東京大学卒業、東京大学大学院修士課程修了(分子生物学)、ビジネス・ブレークスルー大学大学院修士課程修了(MBA)。元ファイザー勤務、元ジョンソン・エンド・ジョンソン勤務(R&D)。現在、青年海外協力隊(任期:2017年10月~2019年9月、活動概要:VIETJOベトナムニュース記事参照)。
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