ベトナムニュース総合情報サイトVIETJO [ベトジョー]
 ようこそ ゲスト様 

【第7回】採れたてトマトをめぐって

2019/06/21 09:25 JST配信

昨年度、 Thien Sinh Farm(ティエンシン・ファーム) の濱氏からご提案をいただき、幼稚園で菜園を始めました。Thien Shnh Farmはダラットに農場を持ち、オーガニック野菜を販売するお店です。わざわざダラットから良質の土をホーチミンまで運び、幼稚園のベランダに菜園を作ってくださいました。

それにちなんで、先日濱氏から「ダラットでとっても美味しいトマトが大量に採れたので、お分けします」というメッセージをいただき、大喜びでお願いしました。翌日、年長児・年中児の子ども達の前に真っ赤に熟れた大量のトマトが到着しました。

箱から取り出して、ベンチの上にトマトが並べられる速度と、周りにいた子どもたちが手を伸ばしてトマトに触れる速さがほぼ一緒でした。

トマトに触ろう

今回は、「トマトを観る」のではなく、まず触ってみることを保育者たちは優先しました。保育者が最初に心配したことは、子どもたちはトマトに触ったら潰してしまうのでは…?でした。ところが、トマトを乱暴に扱う子は誰一人いません。大事そうにくんくんと匂いも嗅いでいます。桃太郎サイズのトマトとミニトマトを見て、その形がいろいろあることを発見した子どもたちは、その発見を喜んでいました。真っ赤に熟れたトマト群が子どもたちを上手に誘導する様子を感じました。

いよいよ実食

濱さんからどのようにトマトを育てるのかという説明を聞き、いよいよ実食です。給食を待ってからの試食ではなく、その場で食べてみることで、トマトの美味しさがより実感できると思ったからです。

その味は予想以上でした。切った瞬間にフレッシュなトマトの香りが部屋中に広がりました。3歳児の部屋では子どもたちの目の前で保育者がトマトを切りましたが、包丁の音にも喜び、トマトが切れた途端に歓声と拍手が起こったほどだそうです。子どもたちの感動は、こういった場面で起こるんだと保育者も驚かされました。

年中児・年長児の目の前に切ったトマトが運ばれてきた瞬間、それまで手が出ていましたが、なんと鼻を突き出し、匂いを嗅ぎます。そして、食べる。においを嗅いだ地点で、すでに美味しいとわかっていたのでしょう。

年中のA君はトマトが大嫌いで、給食では一切食べていませんでしたが、気付いたら口の中にミニトマトを次々と入れています。年長児も「おかわり、おかわり」とあっという間に、少しお試しという気持ちで出したトマトは売り切れました。後のお楽しみで残しておいたトマトもきれいに完食でした。

また余談ですが、ちょうどトマトの試食の際に外からトンボが迷い込み、これまた大騒動でした。「トマトがきになる。でもトンボもきになる」2つの気になるをどう処理しようか、子どもたちの戸惑いが非常に愉快に映りました。

畑作りと子育て

子どもたちに感動を呼び起こしたトマト群に、私自身も大きく感動しました。農作物は作り手の気持ちが込められた作品です。育て方には、多少の難しさがありますが、土の肥料のやり方、大事に苗を育てる方法を写真とともに解説してくださる濱さんの姿勢がとても勉強になりました。

子ども :「おいしいやさいができるためには、どんなつちがいいの?」

濱さん :「ミミズがいっぱい出る土がいいんだよ。」

子ども :「え?ようちえんでもほしいけど、そういうつちはハエがでてきたなくない?」

濱さん :「乳酸菌を入れると匂いが発生せず、ハエがこない研究ができているんだよ。」

濱さんと子どもたちのこのようなやり取りがありました。菜園の雨よけも身近にあるものを工夫して屋根を作ってくださり、苗を大切に守ってあげる気持ちが溢れていました。作物を大事に育てること、愛情を持って育てること、濱さんの畑作りから、子育てに通じるものを感じました。

本物は人の「心を動かす」これは子どもたちと付き合う中で私の中で確信していったことです。子どもだからこの程度でいいだろうといった手抜きでは、感動は呼び起せません。小さな子どもたちに大きな未来を期待する大人たちは常に子どもたちの前では、真剣に、いかに本当の姿を見せることができるか。それが保育には大切なポイントだと私は思っています。

著者紹介
多々内三恵子
おおぞら日本人幼稚園理事長・園長。

タオディエン日本人幼稚園園長。

静岡大学教育学部附属幼稚園・青山学院幼稚園教諭を経てホーチミンで日系幼稚園を開園。

日本の保育を真摯に、かつユニークに展開中。

子どもの世界の面白さを語ったら止まらない。

>> おおぞら日本人幼稚園ウェブサイト

>> タオディエン日本人幼稚園フェイスブックページ
子育て奮闘中のパパママにエール!
その他の記事はこちら>
© Viet-jo.com 2002-2025 All Rights Reserved. 
※VIETJOベトナムニュースは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。 免責事項
新着ニュース一覧
政府、私募社債発行に関する規制を厳格化 書類偽造は最大890万円 (17:59)

 政府は、私募社債発行や第三者割当株式発行の管理を強化するため、政令第306号/2025を公布した。同政令は、政令第156号/2020と政令第158号/2020の一部を改正・補足するもので、第三者割当株式発行、私募社債発...

ベトジェットエア、コンダオ線の運航再開 中国製航空機を再導入 (17:12)

 格安航空会社(LCC)最大手ベトジェットエア[VJC](Vietjet Air)は12月3日、ハノイ市ノイバイ国際空港およびホーチミン市タンソンニャット国際空港と、ホーチミン市(旧バリア・ブンタ

24年の音楽著作権徴収額、+12.7%増の1400万EUR 世界47位 (14:06)

 ベトナム音楽著作権保護センター(VCPMC)は25日、2024年のベトナムの音楽著作権料徴収額は前年比+12.7%増の1400万EUR(約25億4000万円)で世界47位、デジタル著作権料徴収額は同+15.7%増の1200万EUR(約21億7000...

ホーチミンの市場とともに生きる:バンコー市場 (23日)

 ホーチミン市のめまぐるしく変わりゆく街並みの中で、バンコー市場(cho Ban Co)は、記憶の断片のようにひっそりと存在している。商人たちは日々、市場で商売を続けている。まるで、1束の野菜が、1kgの玉ネギが...

ホーチミン:放置荷物から発見の腐乱死体、身元は20代韓国人男性 (13:50)

 韓国の聯合ニュースは、ホーチミン市にある高層マンションのロビー付近に放置された荷物から男性の腐乱死体が見つかった事件の続報として、遺体が韓国人男性のものと判明したと報じた。  ベトナム外務省の...

ハノイ:公示地価を更新、1平米最高415万円 (6:49)

 ハノイ市人民評議会は26日、2026年1月1日から適用される市内各地の公示地価を承認する決議を採択した。  新たな公示地価表では、価格基準区域を従来の区・郡(2025年7月1日廃止)単位ではなく、全市を17区域...

ホーチミン:新春フラワーロード2026、2月15日から開催 (6:13)

 ホーチミン市人民委員会は、テト(旧正月)の名物となっているサイゴン街区(旧1区)歩行者天国グエンフエ(Nguyen Hue)通りの「フラワーロード」を、2026年2月15日(日)から22日(日)にかけて開催すると発表した。今...

家族3人毒殺の女に死刑判決、1年足らずで次々不審死 (5:57)

 東南部地方ドンナイ省人民裁判所は27日、シアン化物を盛って複数人の家族を殺害したグエン・ティ・ホン・ビック被告(女・39歳)に死刑判決を下した。  ビック被告は、殺人罪と有毒物質の違法所持・輸送・使...

年初11か月の自然災害被害、死者・行方不明者409人 (5:55)

 ベトナムでは2025年初めから現在までに、自然災害が頻発しており、様々な要因も重なって被害が拡大中だ。11月末の現時点で自然災害による死者・行方不明者は409人に上り、経済的な被害額は85兆VND(約5060億円)...

ブラザー工業、ベトナムに産業機器事業のサービスサポート拠点新設 (4:30)

 プリンターや家庭用・工業用ミシンなどの製造を手掛けるブラザー工業株式会社(愛知県名古屋市)は1日、自社の産業機器事業においてベトナムで初となるマーケティングおよび代理店のサービスサポートを担う事務所...

SAAF、地盤調査のベトナム子会社を売却へ 事業見直しで (4:23)

 SAAFホールディングス株式会社(東京都江東区)は、同社グループ全体の事業ポートフォリオの見直しに伴い、日本国内のコア事業へのさらなる成長の実現に向けて、ベトナム事業を見直し、連結子会社を閉鎖する。 ...

福井大学、電力大学との学術交流協定を更新 原子力人材育成など (3:20)

 福井大学(福井県福井市)はハノイ市の電力大学(EPU)と2014年に大学間協定を締結し、学生や研究者の交流を深めてきた。両大学はさらなる交流の強化を図るべく、11月10日に同協定を更新し、福井大学文京キャンパス...

ホーチミン:金属製品&手工具展示会、12月4日から開催 (2:39)

 ホーチミン市タンミー街区(旧7区)のサイゴンエキシビション&コンベンションセンター(SECC:799 Nguyen Van Linh, phuong Tan My, TP. Ho Chi Minh)で12月4日(木)から6日(土)まで、「第10回金属製品&手工具展...

ホーチミン:「オンチェーン経済連盟」設立、国際金融ハブ目指す (27日)

 ホーチミン市で25日に開催された「CEO 500 - Tea Connect」の対話セッションで、ファム・ミン・チン首相や同市共産党委員会のチャン・ルウ・クアン書記、世界経済フォーラム(WEF)の責任者などの立ち会いのもと...

不二家と丸紅、タイニン省で焼菓子工場竣工 カントリーマアム生産 (27日)

 株式会社不二家(東京都文京区)と丸紅株式会社(東京都千代田区)の合弁会社である不二家ベトナム(FUJIYA VIETNAM、ホーチミン市)は、南部地方タイニン省(旧ロンアン省)のフウタイン工業団地で焼菓子製造工場を竣...

©VIETJO ベトナムニュース 2002-2025 All Rights Reserved