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【第72回】VinFastの未来展望:販売動向からVinFastの今後を考える

2024/05/14 00:00 JST配信

VinFast:鮮やかなIPOデビューとその後の株価低迷

最近当社に複数の国際的なメディア企業からVinFastの話を聞きたいという問い合わせを受けるようになりました。鮮烈なNasdaqデビューを飾ったVinFastのその後の株価低迷から記事として取り上げたいという内容です。

VinFastの急成長とその影響力は、2023年のNasdaq市場への上場によって世界的な注目を集めました。初日の市場での評価は850億ドルという驚異的な数値で、これによりVinFastはアメリカの老舗自動車メーカー、ゼネラル・モーターズやフォードを時価総額で上回るという偉業を成し遂げ、ベトナムだけでなく日本においても大きな話題となりました。しかしながら、その後株価は低迷を続け、現在は公開価格の1/4にまで下落しています。

タクシー依存の国内と苦戦する米国事業

VinFastの2023年の販売台数は34,855台と、当初の目標の5万台を下回ったものの、ベトナム自動車工業会(VAMA)が発表している2023年の自動車販売数が30万台程度であることを考えると、非常に大きな数値です。実際、ベトナムの街中でVinFastの車を目にすることは全く珍しくなくなりました。とはいえ、この台数の内訳を見てみるといくつかの販売要因が見えてきます。

着目すべき一点目は、Vingroup創業者のPham Nhat Vuong氏が創設したタクシー会社Xanh SM社への販売依存の高さです。Xanh SM社は水色の車体が特長的なVinFastの車両を使ったタクシー会社ですが、2023年の販売台数の70%以上(25,000台程度)がこのXanh SM社への販売だと言われています。新しい車体と自社雇用のドライバーによる卓越したサービスでXanh SM自体の評判は上々なのですが、タクシー事業自体が競争の激化から利益の出づらいビジネスとなっており、初期投資的な面が非常に強い販売だと考えられます。

また、着目すべきもう一点はVinFastの米国事業です。国内市場での一定の成功とは裏腹に、Vinfastの海外での展開は困難を極めています。アメリカ市場では、アメリカ有数の展示会であるCESでの発表会やショールームの展開など初期投資を行ってきましたが、北米で販売された台数は1,000台未満に留まっています。アメリカの自動車評価サイトなどではVinFastのモデルについて残念ながら厳しい評価が相次いでおり、ここからの巻き返しは簡単では無さそうです。

VinFastの未来展望と持続可能性

2024年に向けてVinfastは販売台数ターゲットを10万台と、2023年の3倍弱という野心的な目標を掲げています。また、生産体制に関しても2026年までに95万台の生産体制を整備することを計画しています。この95万台という台数は、テスラ社の2023年のグローバルの販売台数が180万台であることを考えても非常に高い数値です。

国内では堅調であるもののベトナム国内の市場サイズが限定的であること、現在販売を依存しているベトナム国内のタクシー事業の将来的な持続性が不透明であること、米国事業が苦戦していること、などからこの販売目標や将来的な生産台数を満たすだけの需要を生み出すためには、海外の需要掘り起こしが必須であり、現在、タイ・インドネシアなどの東南アジア圏だけでなく、インドや中東などでも非常に積極的な投資を行なっています。これだけの大胆な拡大戦略は、Vingroup創業者でありベトナム1の富豪であるPham Nhat Vuong氏のビジョンと高い資金力に基づくものですが、その道のりは容易ではなく、高度なマーケティング、市場環境への順応、競争の激化を乗り越える必要があります。

ベトナム初の製造業がグローバルにこれだけ大きな規模でチャレンジするのは初めてのことだと思います。VinFastのこれまでの挑戦と成長の道のりは、ベトナム製造業がグローバル市場で存在感を示す大きな一歩であり、今後の展開が非常に注目されます。

著者紹介
株式会社Asia Plus代表取締役社長 黒川賢吾

株式会社Asia Plus ( www.asia-plus.net )代表取締役社長。
NTT、ソニー、ユニクロにて海外マーケティングを担当。
2014年にAsia Plusを設立しベトナムマーケットリサーチサービス
「Q&Me( www.qandme.net )」を展開中


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