ベトナムニュース総合情報サイトVIETJO [ベトジョー]
 ようこそ ゲスト様 

難病を抱える若い2人の愛の物語

2007/05/27 08:47 JST配信

 難病に苦しむ若い2人は、共に苦痛を乗り越え幸せをつかんだ。これはそんな2人の愛の物語。

 18歳、将来に夢膨らませる人生で最も美しい時期。チャン・ティ・フオン・ニュンもまたそんな一人だったが、その時彼女は腎不全という重い病気に侵されていた。両親は必死で各地の病院へ彼女を連れて回ったが、病状はさらに重くなるばかり。

 彼女の唯一の友達は日記だった。「腎不全、先生が言うには私の心臓はだんだん動きを止めていっているらしい。もう終わりだ。もう普通の女の子みたいな生活を送ることはできないんだ」。病状が悪化した時には、次のように書いている。「息苦しさ、心臓の痛みや動悸などをただやり過ごすしかない。つらい夜には寝返りばかりうっている。寝ていられなくなると狂犬のように部屋の中をうろつき、中毒患者のように薬を探し求める。食欲はないがのどはやたらと渇き、水を飲みたいけれどそれにも制限があって自由には飲めない」。自殺を考えたこともあるという。「道を歩いているとよく思ったわ。いっそ車にひかれてしまえば、苦しむこともなくなるのにと」

 27歳のチュオン・ビエット・フオンもまた、腎不全に苦しんでいた。彼は北部のライチャウ省で働いていたが、自分の足が日々衰えていくのを感じていた。ハノイに出てきて医者に見てもらったところ、医者から告げられた病名は腎不全だった。彼は2000年の4月から腎不全の療養センターに入ることになった。「病気のせいで仕事も日常生活もすべてその中で行わないといけなかった。仕事はないし、お金もない。恋人もいないし、将来さえないような気がした。すべてがベッドの中。もっと重い症状の人を見ていると希望も何も消えていった」

 しかし、運命はいつまでも2人を離ればなれにはしておかなかった。愛の神様が彼らにほほえんだのだ。ニュンの母が病室の外で待っているとき、いつも会う青年がいた。それがフオンで、彼の境遇を知った母はおこわや軽食を買っておいて渡すようになった。その後、フオンはたびたびニュンの家を訪れるようになる。そうするうちに、母が冗談で「彼があなたのお婿さんになればいいのにね」などということもあった。

 そして「特別な日」はやってきた。彼らを新しい愛情ある生活、生きる望みのある生活へと導いた日。2003年8月3日、雨が降る寒い夜だった。フオンがレインコートを着て現れると、手には美しいバラの花束を持っていた。その記念すべき日から2人の体調は次第に良くなっていき、ハノイへ2人で出かけるまでになっていた。

 2005年8月、2人は結婚する。2人の親族が集まり、シンプルながらもあたたかい式を挙げた。「今、私には家族も家もある。たのもしい夫もいる。かつて夢見たように」。ニュンの日記は幸福な日記に変わった。今も2人は週に3回療養センターへ通っている。フオンがバイクタクシーで稼いで家計を支え、ニュンは家事をこなす。まだまだ大変なことには変わりないが、彼らを見ているととても幸せな日々を送っていることがわかる。

 「他の人と同じ、ごく普通の生活。もう病気だってこともあまり意識しなくなったわ」とニュンはいう。フオンと一緒に食事や睡眠に気をつけ、透析に行く。これこそが愛だと思うの」。ニュンにとって愛とは単なる男女間の感情にとどまらず、生活すべてに対する愛なのだ。

 「重い腎不全患者は余命10年と言われています。私が腎不全になって4年が経ちました。時がたつのは本当に早いものね。私にはもうあまり時間がないの。生きたい。心の底から生きたいと思う。今こうして頑張っているのは、楽しく意味のある人生を送りたいからなの」。そして彼女は今の夢を語った。それは元気になって見慣れた道を自転車で走ることだという。

 最後に彼女の日記から。「今日しかないなんて思わない、明日もあさってもあるのよ。試練は人を強くするわ。最後までやり遂げることに意味があるの」

[2007年5月1日 Thanh Nien紙 電子版].  © Viet-jo.com 2002-2025 All Rights Reserved. 
※VIETJOベトナムニュースは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。 免責事項
新着ニュース一覧
ベトナム人ラッパーがNFTで音楽アルバムを発売、国内初 (10:15)

 ベトナム人ラッパーのPjpoは6月3日、NFT(非代替性トークン)マーケットプレイスの「ダゴラ(Dagora)」と協力し、NFT形式で音楽アルバム「131km」をリリースした。  NFTでの音楽アルバム発売はベトナムで初め...

ダナン:ヘリコプター遊覧ツアーを3年ぶり再開 (9:17)

 南中部地方ダナン市で2日、ヘリコプター遊覧ツアーが正式に再開された。  国防省ベトナムヘリコプター総公社(VNH)傘下の北部ヘリコプター(VNH North)が運航するもので、景観鑑賞と最新の航空技術体験を融合...

北部最大のテーマパーク「ビンワンダーズ・ブーイエン」が開業 (8:17)

 地場系コングロマリット(複合企業)ビングループ[VIC](Vingroup)は1日、北部紅河デルタ地方ハイフォン市ブーイエン島(dao Vu Yen)に北部最大規模となるテーマパーク「ビンワンダーズ

8人兄弟の学者一族「グエン・ラン家」、故クオン氏を偲ぶ【後編】 (6/29)

 ベトナムを代表する考古学者・人類学者で、音楽家としても知られるグエン・ラン・クオン(Nguyen Lan Cuong)氏が2025年5月6日、ハノイ市のベトナム国家大学ハノイ校(ハノイ国家大学)医科薬科大学附属病院で死去...

小型EVタクシー「レッツゴー」、開業1年で500万人輸送 (4日)

 小型電気自動車(EV)タクシーに特化した「レッツゴー・タクシー(Let’s Go Taxi)」は、2024年5月にサービスを開始してから1年間で約500万人を輸送し、走行距離は1500万kmに達した。  レッツゴー・タク...

テトラパック、ホーチミンで食品用紙容器工場の第2期を落成 (4日)

 食品用紙容器の開発・製造を手掛けるスウェーデンのテトラパック(Tetra Pak)は3日、ホーチミン市ビンタン街区(phuong Vinh Tan)の第2ベトナム・シンガポールA工業団地(VSIP2-A)工業団地にある食品用・飲料用紙...

サングループ、ホーチミンで社会・都市交通インフラ整備を提案 (4日)

 観光不動産開発を手掛けるサングループ(Sun Group)はこのほど、ホーチミン市人民委員会に対して、社会インフラおよび都市交通インフラに関する複数の大型プロジェクトの投資を提案した。これらの案件は官民パー...

地場NCS、AI活用のサイバーセキュリティエコシステムを発表 (4日)

 ベトナム国家サイバーセキュリティテクノロジー(Vietnam National Cyber Security Technology Corporation=NCS)は2日、企業や組織のセキュリティ対策を強化するための人工知能(AI)を活用したサイバーセキュリ...

クアンニン省:年末まで毎週末に打ち上げ花火を実施 (4日)

 東北部地方クアンニン省人民委員会は、同省文化スポーツ観光局の提案を受け、2025年7月4日から2026年1月1日までの毎週末(金・土)に、打ち上げ花火を実施することを決定した。地元住民や観光客向けのイベントと...

FPT、AIエージェント教育プログラムを導入 インド企業と提携 (4日)

 ベトナムを代表するIT最大手FPT情報通信[FPT](FPT Corporation)は1日、インドの情報技術(IT)教育組織ジェットキング(Jetking)との間で、人工知能(AI)エージェント教育プログラムの

AI関連の地場スタートアップ「AI Hay」、1000万USD調達 (4日)

 人工知能(AI)を活用した検索プラットフォームを開発する地場スタートアップのAIハイ(AI Hay)はこのほど、東南アジアを中心にテクノロジー分野のスタートアップ企業に投資するアルゴー・キャピタル(Argor Capita...

6月のベトジョー記事アクセス数ランキング (4日)

 VIETJOベトナムニュースが6月に配信した記事のアクセス数ランキングをご紹介します。 1位:個人事業主への電子請求書義務化、店舗が敬遠で現金決済に逆戻り

6月のベトジョー記事10選:省・市再編の決議採択、国会閉幕など (4日)

 6月は、第15期(2021年~2026年任期)国会第9回会議が閉幕しました。今国会では、34本の法律を可決し、14本の決議を採択しました。  国会では、全国63省・市の行政区を大幅に削減して34省・市とする行政区再...

クアンガイ省:ズンクアット経済区で新都市区開発、投資方針承認 (4日)

 チャン・ホン・ハー副首相はこのほど、南中部地方クアンガイ省ズンクアット経済区内でのズンクアット東南新都市区北側・南側の2件の開発案件の投資方針を承認する決定に署名した。  ズンクアット東南新都市...

ベトナム航空、ダナン~大阪線を約5年ぶり運航再開 (4日)

 ベトナム航空[HVN](Vietnam Airlines)は3日、2020年以来約5年ぶりにダナン~大阪線(VN336/VN337)の運航を再開した。同路線は週4便の運航となる。  ベトナム航空は同

©VIETJO ベトナムニュース 2002-2025 All Rights Reserved