ベトナムニュース総合情報サイトVIETJO [ベトジョー]
 ようこそ ゲスト様 

越僑博士と安全野菜生産プロジェクト

2007/09/09 08:19 JST配信

 「私はこれまでに十分外国人のために働いてきた。これからは祖国の人々のために尽くしたい」。そう言って、農学博士グエン・クォック・ボン氏は、住み慣れたオーストラリアの家を離れベトナムへの帰路についた。ベトナムに帰って祖国に貢献するという彼の夢は、およそ20年かかってようやく実現した。

 1969年、中部フエ市出身のボン青年は夢を抱いて日本へ留学。1977年に農学博士と成り、安定した収入を得ながらタキイ種苗で働いた。しかし、さらに研究を深めるために日本農業研究所に入り、稲の研究で有名な教授の助手を務めた。当時の日本では外国人が政府関連機関で主要ポストに付くことは許されておらず、どんなに貢献しても助手の地位に甘んじるしかなかった。

 1980年、ボン博士は一大決心をしてオーストラリアに移住する。彼が到着したのはニューサウスウェールズ州だったが、ちょうど州農業局が農業の研究員(大学卒)を募集しているのを見つける。彼はすぐに応募したが結果は不採用、その理由は「学歴が高過ぎる」ことだった。しかしその1週間後、今度は研究指導員を募集しているのを見つける。さっそく応募すると採用された。彼は「どうやら私のために用意されたポストらしい」と振り返り、「こんないいタイミングで希望の職につけたことは幸運だった」と語る。彼のように専門知識を持っていても、それを生かせる職業につける人は少ないからだ。

 オーストラリア経済は農産物、特に小麦・牛肉・羊毛の輸出に頼るところが大きい。野菜の輸出は少ないが、北半球と気候が逆になることを利用して、輸出用のアジア野菜を生産できるのではないか。そう考えたボン博士はこのプロジェクトを政府に提案、1986年から実施され野菜の輸出額も大幅に増加していった。

 ニューサウスウェールズ州農業局長は1996年、ボン博士の功績を高く評価する発表を行った。そのおかげで彼は出世し収入も増加した。そんな中でも彼のベトナムへの関心は途切れることはなく、インターネットなどでベトナム農業の状況を気に掛けていた。

 この年、オーストラリア政府はベトナムを含む発展途上国のプロジェクトに対する支援を開始、ボン博士はベトナムの安全野菜生産プロジェクトに参加した。オーストラリア政府のこの支援プロジェクトを通して、彼は多くのベトナム人研究者をオーストラリアで研修させ、またオーストラリア人研究者をベトナムへ渡航させて指導にあたらせた。そして、この安全野菜生産プロジェクトこそ、彼の20年来の念願だった祖国への貢献という夢を実現する舞台になった。

[2007年8月26日 Tien Phong紙 電子版].  © Viet-jo.com 2002-2024 All Rights Reserved. 
※VIETJOベトナムニュースは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。 免責事項
新着ニュース一覧
ホーチミン市党委元書記、華人系VTP事件への関与で処分へ (16:30)

 ベトナム共産党中央監査委員会はハノイ市で6日と7日に開いた会合で、ホーチミン市共産党委員会常務部、および同市人民委員会党幹事部など複数党機関・党員の違反を審査し処分を決定した。権限外の党機関・党員...

PFUブルーキャッツ、5月11日開幕のベトナム国際大会に出場 (15:34)

 女子V1リーグのPFUブルーキャッツ(石川県)は、5月11日~19日の日程で南中部高原地方ダクラク省バンメトート市にて開催される「第14回VTV9-ビンディエン国際女子バレーボールカップ」に出場する。  今大会に...

ホーチミン:「ベトナムカフェショー」、5月11日まで開催 (15:29)

 ホーチミン市7区のサイゴンエキシビション&コンベンションセンター(SECC:799 Nguyen Van Linh, quan 7, TP. Ho Chi Minh)で、5月9日(木)から11日(土)まで、コーヒーの展示会「ベトナム国際カフェショー2023(V...

寝床は道端の椅子、幅1.5mの超狭小住宅に暮らす女性 (5日)

 ホーチミン市3区のグエントゥオンヒエン(Nguyen Thuong Hien)通りに面した一角に、幅わずか1.5mという住宅がある。  チュオン・ティ・クックさん(女性・1950年生まれ)はこの住宅に暮らして長いが、あまりに...

ホーチミン:電気バス試行2年、運行中は1路線のみ (14:53)

 ホーチミン市では、電気バス路線の試験導入から2年が経過したものの、補助金の不足とデポ(車庫)用の土地の未確保により、電気バスの展開が難航している。これは、同市交通運輸局が先般発表した報告で明らかにな...

フエ王宮の9つの青銅製鼎の浮彫、アジア太平洋地域記憶遺産に登録 (13:49)

 国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界の記憶(記憶遺産)」を審査する「アジア太平洋地域世界記憶遺産委員会(MOWCAP)」の第10回総会が8日、モンゴル・ウランバートルで開かれ、ベトナムの「フエ宮殿の9つ...

ホーチミン:1区の通り11本で歩道・道路使用料徴収へ、日本人街も (13:45)

 ホーチミン市内の歩道や道路の一部を一時的に使用する法人や個人から使用料を徴収する計画について、1区人民委員会は第1弾として、対象となる11本の道路を発表した。  対象の道路11本は以下の通り。 ◇レ...

23年の各省・市競争力指数(PCI)、クアンニン省が7年連続トップ (6:47)

 ベトナム商工連盟(VCCI)と米国国際開発庁(USAID)が9日に発表した2023年の各省・市競争力指数(PCI)ランキングによると、東北部地方クアンニン省が71.25ポイントで、7年連続でトップを維持した。  同年のPCI...

コンドテル市場の流動性枯渇、1~3月期の成約率わずか1% (6:31)

 不動産開発コンサルティング・仲介を手掛ける地場DKRAベトナム(DKRA Vietnam)が発表したコンドテル(※)市場に関する報告によると、2024年1~3月期に中部地域を中心に全国で4800戸以上のコンドテルが発売されたが...

国内航空会社6社、1~3月期の運航便数6.7万便 定時運航率74.9% (5:01)

 交通運輸省傘下のベトナム民間航空局(CAAV)によると、2024年1~3月期における国内航空会社6社の運航便数は6万6605便だった。  同期に運航便数が最も多かったのはベトナ

ベトジェットエア、ハノイ~広島線を5月12日就航 (5:00)

 格安航空会社(LCC)最大手ベトジェットエア[VJC](Vietjet Air)は5月12日、ハノイ市と日本の広島県を結ぶ国際線を就航する。  ベトジェットエアは現在、ハノイ市とホ

金の投資需要、1~3月期+12%増 直近10年で最高 (4:57)

 世界の主要な金鉱山会社によって構成される非営利団体「ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)」によると、2024年1~3月期におけるベトナムの金(ゴールド)の投資需要は前年同期比+12%増加し、同期として2015年...

国営大手3行、ロンタイン国際空港に18億USDの協調融資 (4:42)

 東南部地方ドンナイ省で建設中のロンタイン国際空港(第1期)のサブプロジェクト3(旅客ターミナルなどの空港施設の建設)の投資主であるベトナム空港社[ACV](Airports Corporation Of

労働傷病兵社会省法制部長を逮捕、国家機密情報漏洩容疑で (3:14)

 労働傷病兵社会省法制部のグエン・バン・ビン部長(男・51歳)が逮捕された。ハノイ市警察が9日に明らかにした。  ビン容疑者は、刑事法第337条に抵触し、国家機密情報漏洩容疑で捜査を受けている。違反の詳...

テトラパック、ビンズオン省の飲料用紙容器工場に追加投資 (3:05)

 食品用紙容器の開発・製造を手掛けるスウェーデンのテトラパック社(Tetra Pak)はこのほど、東南部地方ビンズオン省の第2ベトナム・シンガポール工業団地(VSIP2)にある飲料用紙容器生産工場に対する9700万EUR(約...

©VIETJO ベトナムニュース 2002-2024 All Rights Reserved