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この道50年、ハノイの街角で絶大な信頼を誇る「凄腕」自動車修理工の女性

2020/12/20 05:51 JST配信
(C) vnexpress
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 歳をとり、身体も弱ってきたため、サムさんはこの十数年間はあまり修理をすることはなく、主にバッテリーの販売や交換を行っている。今は、不運にも狭い道を走っている時や深夜に車が故障してしまったという場合だけ、修理に応じている。

 サムさんは若い時から現在に至るまで、祝日やテトの時でさえ、突然の修理の依頼の電話に備えてめったに化粧もせず、髪も下ろさない。「私はオフィスに出勤する必要もないし、お化粧はいりませんよ」とサムさんは油で汚れた大きな両手を見せながら言い、「男性の手みたいでしょ」と笑った。

 「子供の頃を思い出すと、母はいつも車の下に入り込んでいました。今はもう修理はしていませんが、今でも時々、10kgもの重いバッテリーを運ばなければなりません。私も母を手伝いたいのですが、コツがいるからと手伝わせてくれないんです」と、42歳になる次女のホアン・キム・ガンさんは語る。

 サムさんの3人の子供たちは、高齢の母親に仕事を辞めてほしいと何度も家族会議を開いてきたが、サムさんは毎年「来年は辞めるから」と言い続けている。サムさんは生涯を通じて続けてきた修理の店を閉じることは望んでいない。「誰かにこのお店を継いでもらいたいのですが、3人の子供たちは誰も継いでくれません」とサムさん。

 以前、3人の子供たちは人を雇い、弟子入りをして店を買い取りたいふりをしてもらい、サムさんが自ら引退するように仕組んだことがある。しかし、自分の店を継いでくれる人が現れて大喜びする母親を見て、子供たちは動揺した。「騙されていたことを知った母が悲しみ、怒ることを恐れて、その作戦は中止しました」とガンさんは打ち明けた。父親が亡くなってからは、サムさんに無理やり仕事を辞めさせる理由がますますなくなってしまった。

 最近、ガンさんはソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)にサムさんについて投稿した。「母は歳をとって身体も弱くなり、さらに慎重な人なので、他の人よりも作業に時間がかかるでしょう。それでも、ロンビエン区周辺にお住まいで時間がたくさんある方は、ぜひ母のお店に足を運んでみてください。重要なのは、母が自分の好きな仕事をすること、そして悲しみを和らげるために人と会話をすることです」。

 昼時、サムさんは初めて店を訪れた客との会話に夢中になっていた。「それで、サムさんはいつになったら2度目の退職をするつもりですか?」と客がたずねると、「歯が全部なくなるまで働くよ。来年には引退しようかね」と笑いながら答えた。「毎年この言葉を聞いていますが、一向に辞める気配はありません!」と、サムさんの隣に座る娘が言うと、親子は一緒に笑った。

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