ベトナムニュース総合情報サイトVIETJO [ベトジョー]
 ようこそ ゲスト様 

父親に火をつけられた子供が人生を取り戻すまで

2023/08/06 10:27 JST配信
(C) vnexpress
(C) vnexpress

実際のところ、リンさんが耐えなければいけない痛みは、身体の一部に火傷を負った患者に比べるとはるかにひどいものだった。母親のハーさんは過去12年間、壊死した部分の処置、癒着した指の付け根の剥離と皮膚の移植など、数えきれないほどの手術を受ける息子を見守ってきた。

 最も痛いのは、癒着した皮膚の層を切って縫合する処置だ。手術は何十時間にも及び、ハーさんにとって、手術が終わるのを待つ時間は拷問のようだった。リンさんは痛みのあまり、何度となく病院のベッドで泣き叫んだ。そのたびにハーさんは息子を慰めようと「欲しいものを何でも買ってあげるから」と約束した。

 ゲーム機、おもちゃ、ヒーロー人形などは、リンさんの手術の「戦利品」だ。リンさんは手術を繰り返す中で痛みに慣れ、慰めの言葉もいらなくなったが、それでも母親に甘えるようにした。「手術の前になると母はいつも大泣きするんです。でも、僕がご褒美をねだると泣き止んで、笑ってうなずいてくれるから」とリンさん。母親に甘えるということは、母親を悲しませないためのリンさんの気遣いだったのだ。

 9年前、リンさんは同級生と同じように小学校1年生になった。周りに後れをとらないように、ハーさんはリンさんに付き添って文字を書く練習をさせた。韓国での3回の手術を経て、癒着していたリンさんの指は離れたが、指の関節は1つずつしかなく、右手には4本の指しか残っていなかった。「初めてペンを握った時、息子の手からは膿が滲み出て出血していました。痛みで息子はずっと泣いていました」とハーさんは当時を振り返る。

 リンさんの短い指で長いペンを持つと、すぐに滑り落ちてしまった。ハーさんは、リンさんが必死でペンと格闘し、ノートに一画ずつ練習している姿を見て、何度も涙を流した。最初は落書きのような文字だったが、だんだんとペンをしっかり握れるようになり、きれいに並べた文字を書くことができるようになった。

 リンさんは小学校と中学校の9年間で毎年、優秀な生徒として表彰された。何よりも学校に行くのが大好きで、学校を休むのは古傷が痛む時だけだった。

 想像を絶する痛みを経験したリンさんだが、しばしば自分が障がい者であることを忘れているかのような行動力を発揮する。4回目の手術の後、首が自由に動くようになり、腕も曲がるようになったリンさんは、自転車の練習をしたいと言い出した。

前へ   1   2   3   次へ
[VnExpress 06:31 14/06/2023, A].  © Viet-jo.com 2002-2025 All Rights Reserved. 
※VIETJOベトナムニュースは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。 免責事項
新着ニュース一覧
エスタカヤ電子工業、台湾鴻海精密工業子会社に関連会社の持分譲渡 (2:05)

 半導体デバイス・モジュール製品及び産業用装置の開発・製造・販売などを手掛けるエスタカヤ電子工業株式会社(岡山県浅口郡)は、電子機器受託生産(EMS)で世界最大手の台湾フォックスコン・テクノロジー・グルー...

世界のベトナム人街を訪ねて【ベルリン編・前編】 (6日)

(※本記事はVIETJOベトナムニュースのオリジナル記事です。) 【ロンドン編】はこちら 【パリ編】は

ベトナム人ラッパーがNFTで音楽アルバムを発売、国内初 (5日)

 ベトナム人ラッパーのPjpoは6月3日、NFT(非代替性トークン)マーケットプレイスの「ダゴラ(Dagora)」と協力し、NFT形式で音楽アルバム「131km」をリリースした。  NFTでの音楽アルバム発売はベトナムで初め...

ダナン:ヘリコプター遊覧ツアーを3年ぶり再開 (5日)

 南中部地方ダナン市で2日、ヘリコプター遊覧ツアーが正式に再開された。  国防省ベトナムヘリコプター総公社(VNH)傘下の北部ヘリコプター(VNH North)が運航するもので、景観鑑賞と最新の航空技術体験を融合...

北部最大のテーマパーク「ビンワンダーズ・ブーイエン」が開業 (5日)

 地場系コングロマリット(複合企業)ビングループ[VIC](Vingroup)は1日、北部紅河デルタ地方ハイフォン市ブーイエン島(dao Vu Yen)に北部最大規模となるテーマパーク「ビンワンダーズ

小型EVタクシー「レッツゴー」、開業1年で500万人輸送 (4日)

 小型電気自動車(EV)タクシーに特化した「レッツゴー・タクシー(Let’s Go Taxi)」は、2024年5月にサービスを開始してから1年間で約500万人を輸送し、走行距離は1500万kmに達した。  レッツゴー・タク...

テトラパック、ホーチミンで食品用紙容器工場の第2期を落成 (4日)

 食品用紙容器の開発・製造を手掛けるスウェーデンのテトラパック(Tetra Pak)は3日、ホーチミン市ビンタン街区(phuong Vinh Tan)の第2ベトナム・シンガポールA工業団地(VSIP2-A)工業団地にある食品用・飲料用紙...

サングループ、ホーチミンで社会・都市交通インフラ整備を提案 (4日)

 観光不動産開発を手掛けるサングループ(Sun Group)はこのほど、ホーチミン市人民委員会に対して、社会インフラおよび都市交通インフラに関する複数の大型プロジェクトの投資を提案した。これらの案件は官民パー...

地場NCS、AI活用のサイバーセキュリティエコシステムを発表 (4日)

 ベトナム国家サイバーセキュリティテクノロジー(Vietnam National Cyber Security Technology Corporation=NCS)は2日、企業や組織のセキュリティ対策を強化するための人工知能(AI)を活用したサイバーセキュリ...

クアンニン省:年末まで毎週末に打ち上げ花火を実施 (4日)

 東北部地方クアンニン省人民委員会は、同省文化スポーツ観光局の提案を受け、2025年7月4日から2026年1月1日までの毎週末(金・土)に、打ち上げ花火を実施することを決定した。地元住民や観光客向けのイベントと...

FPT、AIエージェント教育プログラムを導入 インド企業と提携 (4日)

 ベトナムを代表するIT最大手FPT情報通信[FPT](FPT Corporation)は1日、インドの情報技術(IT)教育組織ジェットキング(Jetking)との間で、人工知能(AI)エージェント教育プログラムの

AI関連の地場スタートアップ「AI Hay」、1000万USD調達 (4日)

 人工知能(AI)を活用した検索プラットフォームを開発する地場スタートアップのAIハイ(AI Hay)はこのほど、東南アジアを中心にテクノロジー分野のスタートアップ企業に投資するアルゴー・キャピタル(Argor Capita...

6月のベトジョー記事アクセス数ランキング (4日)

 VIETJOベトナムニュースが6月に配信した記事のアクセス数ランキングをご紹介します。 1位:個人事業主への電子請求書義務化、店舗が敬遠で現金決済に逆戻り

6月のベトジョー記事10選:省・市再編の決議採択、国会閉幕など (4日)

 6月は、第15期(2021年~2026年任期)国会第9回会議が閉幕しました。今国会では、34本の法律を可決し、14本の決議を採択しました。  国会では、全国63省・市の行政区を大幅に削減して34省・市とする行政区再...

クアンガイ省:ズンクアット経済区で新都市区開発、投資方針承認 (4日)

 チャン・ホン・ハー副首相はこのほど、南中部地方クアンガイ省ズンクアット経済区内でのズンクアット東南新都市区北側・南側の2件の開発案件の投資方針を承認する決定に署名した。  ズンクアット東南新都市...

©VIETJO ベトナムニュース 2002-2025 All Rights Reserved