ベトナムの経済発展に伴い都市部では雨後の筍のごとく次々に高層ビルが建設され、また人口増加に伴う住宅需要の高まりで高層団地があちらこちらで建設されている。
1年に数度の地震があたりまえの地震大国日本からベトナムに訪れた日本人の感覚では、ベトナムでは地震を気にすることなく、またこの国では地震はないとさえ思うかもしれない。
しかしハノイを初めとしたベトナム北部地域(特に北西部地域)は地震発生地域で過去にマグニチュード(M)5クラスの地震が発生している。
文献上に記載のある最も古い地震の記録は1277年で、北西部地方で震度7(ベトナム式=M5クラス)の地震が発生したと推定され、その翌年の1278年、そして1285年にはハノイ地方を同程度の地震が襲ったと見られている。
また、最近では1958年にハノイの西60キロにあるYen Lac(Vinh Phu省=注:現在のVinh Phuc省とPhu Tho省)でM5.3を記録しているほか、同じくハノイから60キロ離れたTan Yen(Bac Giang省)でもM5.6(震源の深さ28km)の地震が発生し、ハノイ市で震度6(ベトナム式)の揺れを観測したほか、北部地方の広い範囲で震度4~5(同)を観測した。
ベトナム科学技術院所属地球物理院のNguyen Ngoc Thuy準教授によると、ベトナムは世界的に見ると平均的な地震国で、そのほとんどが無感地震ではあるが毎日地震は発生しているという。またベトナムの地震多発地域は北西部地方で毎年M1~2程度の地震が発生しており、ここ5~7年ではM4~5クラスの地震が発生し、平均的には50年間に1回の割合でM6~6.8レベルの地震が発生していることになるという。近年の100年間では計120回の地震が観測されており、うち震度6(ベトナム式)以上が32回、震度7(同)が3回発生している。
地球物理院ではハノイ周辺でこの先M5.5~6程度の地震が発生する確立が高いと考えており、仮に地震が発生すれば地盤の弱いHai Ba Trung区とThanh Tri県では大きな被害を受けるだろうと警告している。
そのほかのハノイ市内ではDong Anh県が最も地盤が固く、続いてTay湖西部とTu Liem県、Hoan Kiem区の順となっている。
話は冒頭に戻るが、急な経済成長と人口増加で需要を増す高層ビルや高層団地。概観は素晴らしく経済成長のシンボルとして首都の街を見下ろしているが、連日紙面を賑わす手抜き工事や施工業者が少しでもお金を懐に入れたいがために工事費を浮かして建設し、完成直後から壁のひび割れ、浸水が発生する団地の数々。M5程度の地震が起きてもどっしり立っていられる建物は果たしてどのぐらいあるのだろうか。