ホーチミン市出身の女子学生ボー・ティ・ミン・アンは、現在米国の大学で学ぶとともに積極的に社会活動も行っている。高校2年生のときに初めて渡米し、ロサンゼルスに1年間滞在した。このとき彼女は、身体障害者と枯れ葉剤被害者の支援を行う非政府組織(NGO)「スパイラル・ファウンデーション」の通訳を務めたほか、このNGOが作っている記念品の販売を手伝い、わずか4カ月で5万米ドル(約460万円)の資金調達に貢献した。
アンはすでに、米国でベトナム人枯れ葉剤被害者のために支援活動を行う有力メンバーの1人になっている。枯れ葉剤の影響を受けている子どもたちのことについて多くの高校や大学に招かれて講演している。しかしそんな彼女も、実はベトナムでは一度もこうした活動をしたことがなかったという。
昨年行った講演を振り返って、彼女はこう語った。「私にとって難しいのは政治にかかわる微妙な問題について話すことです。米政府はこの問題について今もベトナム政府と議論を続けています。だから私は、ベトナムの枯れ葉剤被害者がどんな生活を送っているのかを彼らに分かってもらおうと思ってお話ししています」。
枯れ葉剤被害者の写真を見せるときには、もっと気を使うという。「米国の高校生はこのような事実をまったく知らない場合が多く、ショックを与えてしまうからです。だから高校生相手に講演する際には言葉づかいや見せる写真にも気を配らないといけません」。
彼女はこの問題について米国の大学教授らと話し合う会も開いているが、彼らと話す場合は別のアプローチをとっているという。「これまでにこの問題は以前より深く議論されるようになっています。私が彼らの国や体制を告発しようとしているのではないことを分かってもらいながら、この問題についての問いを彼らに投げかけて理解を深めてもらおうと努力しています」。