ベトナムニュース総合情報サイトVIETJO [ベトジョー]
 ようこそ ゲスト様 

<明日は明日の試合がある>フィリップ・トルシエ(元サッカー日本代表監督) ベトナムで育成世代にサッカー全力指導中【後編】

2019/08/18 05:00 JST配信
(C) Miwa.A
(C) Miwa.A 写真の拡大

―――監督業とワインは、比べる対象ではないのですね。

別ものです。ワインというよりブドウ畑をやっている、というほうが私の実感に近く、ワインはその産物です。ブドウ畑での仕事は、一人静かに自然と自分とに向き合える時間で、自分のバランスが取れる。公的で常に人に囲まれ、周りに表現し続けるサッカー監督の世界と全く違う。何かを創る、のは同じですが、新しいモノづくりの喜びを発見できて幸せです。できたワインはまた、人々と分かち合うもので、ブドウ畑の仕事は、私にとっての哲学のようなものです。



(C) P.Troussier


(C) P.Troussier


2014年からボルドーのサンテミリオン地区でトルシエ氏が作る赤ワイン。グランクリュの“ソルベニ”(SOL BÉNI 343)は日本でも入手可能。 ソルベニとは、氏が30年前にフランスを出て初めて監督として仕事をした、アフリカのコートジボワールのチーム練習場の地名“祝福された地”。そこから始まった、という思いが込められている。エチケットには、サッカーゴールと氏の戦術代名詞フラット3の布陣“343”の数字が入っている。

―――トルシエさんのように大きな仕事を達成してしまうと、その後の人生では何が生きがいになるのですか。

私は64歳ですが、我ながら、自分の魂は子供のままだと思います。一日一日、別の新しいエネルギーが出てくる。毎日同じ選手と同じサッカーをしていても、繰り返している気がしない。朝起きると「さあ今日は何をしよう!」と子供のように思います。その日は昨日とは違うので、何でもできる気分に、毎朝なります。アイディアが次々に出てきて、試してみるとまた新しい展開が開けて行く。

確かに自分は“サッカー選手になる、W杯に出る”という子供のころからの夢を、運よく実現することが出来ました。しかし私は選手としては大成せず、指導者に転向し、監督となってからはフランスを出てアフリカへ行き、振り返ってみれば、何度も大きな決断をして進んできました。夢をかなえるまでの道に、決められたコースはない。幸運はただ待っていてもこないでしょうが、運命は、こちらからけしかければ、動き出すことがある。それは、夢を持つ誰にでも起こりうる。“人生にチャンスはある”と伝えることが、仕事になりました。

--------------------

 この国では長い間、人々が夢を持つことは難しいことだった。しかし今日、ベトナムは夢を持って力強く新しい時代に突き進んでいっている。ベトナムがサッカーW杯に出場し、国中が赤い歓喜の色に包まれる日は、近い将来きっとくるだろう。今グラウンドを走る少年たちの何人かは、その時、代表選手になっているかもしれない。しかしその一方、ほとんどの少年たちは、かなわなかった夢と現実とに向き合うことになる。

 傷を負っても、それはより強くなるチャンスで、明日の試合は今日の結果とは関係ない。“それぞれの次の試合をあきらめない、一人の強い人であれ”と、トルシエ氏はここで、少年たちに懸命に伝えようとしている。

【関連記事】

元日本代表監督トルシエ氏(現U-19ベトナム代表監督)、日本サッカー殿堂入り (2020/09/16)
第2回「ベトナム日本国際ユースカップ U-13」開催記念、トルシエ監督&井尻監督によるスペシャル対談 (2019/12/14)
AFC U-19選手権予選がホーチミンで開催、影山ジャパンがトルシエベトナムと激突 (2019/10/28)
U-16日越国際交流サッカー大会、ベトナムPVFの壮行会を日本大使館で開催 (2019/08/24)
<明日は明日の試合がある>フィリップ・トルシエ(元サッカー日本代表監督) ベトナムで育成世代にサッカー全力指導中【中編】 (2019/08/11)
<明日は明日の試合がある>フィリップ・トルシエ(元サッカー日本代表監督) ベトナムで育成世代にサッカー全力指導中【前編】 (2019/08/04)
森に帰ったゾウ~ベトナム最後のゾウたち~【後編】 (2019/05/12)
森に帰ったゾウ~ベトナム最後のゾウたち~【前編】 (2019/05/05)

前へ   1   2   3   4   次へ
© Viet-jo.com 2002-2025 All Rights Reserved. 
※VIETJOベトナムニュースは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。 免責事項
新着ニュース一覧
抗仏戦争の郵便配達員、地獄の10日間の記憶 (10:19)

 電気ショック、水責め、足指潰しなどの拷問を10日間にわたり受け続け、体重が20kg減ったにもかかわらず、郵便配達員だったレ・バン・トゥーさんは一言も口を割らず、通信の「生命線」を守り抜いた。  トゥ...

ハノイ:金メッキホテルが金粉エッグコーヒーを提供、1杯15万VND (18日)

 ベトナム戦争中にミルク不足のため、ハノイ市のメトロポールホテル(現ソフィテル・レジェンド・メトロポール・ハノイ)のシェフだったグエン・バン・ザン氏が、代用品として卵黄を使用したことで誕生したエッグ...

米誌選出「世界で最もフレンドリーな国トップ10」、ベトナムが6位 (18日)

 米国の大手旅行雑誌「コンデナスト・トラベラー(Conde Nast Traveler=CN Traveller)」はこのほど、専門家と読者の投票で決まった「世界で最もフレンドリーな国トップ10」を発表した。同ランキングでベトナムは...

パスポート自由度、ベトナムは199か国中92位 (18日)

 コンサルタント会社ヘンリー&パートナーズ(Henley & Partners)は、世界199か国・地域のパスポートおよび世界227か国・地域の渡航先を対象としたパスポート自由度ランキング(The Henley Passport Index)の最新...

AI法案、国家AIインフラ整備へ 26年施行の見通し (17日)

 科学技術省は、人工知能(AI)法草案を公表し、意見聴取を実施している。  国会での審議・可決を経て、2026年に施行される見通しだ。同法の施行により、ベトナムはAI技術の健全な発展と国際競争力の強化を目...

ホーチミン:カイメップ・ティバイ港でクルーズ船寄港停止の恐れ (17日)

 米国のクルーズ大手ロイヤル・カリビアン・グループ(Royal Caribbean Group)が運航する、外国人観光客4000人超を乗せた国際クルーズ船「オベーション・オブ・ザ・シーズ(Ovation of the Seas)」が、18日に予定...

ベトテル郵便、ダナンで物流センターを着工 (17日)

 国防省傘下の携帯通信大手ベトナム軍隊工業通信グループ(ベトテル=Viettel)の子会社である宅配大手のベトテル郵便[VTP](Viettel Post)は15日、南中部地方ダナン市のリエンチエウ工

カマウ省:ベトナム戦争の戦勝遺跡地区が完成 (17日)

 南部メコンデルタ地方カマウ省人民委員会は15日、チャンファン村でダムゾイ・カイヌオック・チャーラー(Dam Doi - Cai Nuoc - Cha La)戦勝遺跡地区の完成式を開催した。  同戦勝遺跡地区は面積約3万m2で、...

ベトテルの子会社2社、ラオスで物流合弁会社を設立 (17日)

 ラオスの首都ビエンチャンで15日、国防省傘下のベトナム軍隊工業通信グループ(ベトテル=Viettel)の子会社であるスターテレコム(Star Telecom)とベトテル郵便[VTP](Viettel Post)に

大規模な消火器偽造ルートを摘発、「ドラゴン」ブランド (17日)

 ハノイ市警察は14日、市場で流通している「ドラゴン(DRAGON)」ブランドの消火器が偽造品であり、火災を消し止める能力がないとして、メーカーなどに対する捜査を進めている。  捜査によると、南部地方タイ...

韓国OCI、ベトナムのウエハー工場に投資 年産規模2.7GW (17日)

 化学関連事業を手掛ける韓国のOCIホールディングス(OCI Holdings)のマレーシア子会社で、太陽電池用ポリシリコンの製造を手掛けるOCIテラサス(OCI TerraSus)は、ベトナムにあるシンガポールの太陽光設備関連メ...

タインホア省:人民軍上将のアイン氏が党委書記に再任 (17日)

 北中部地方タインホア省共産党委員会が15日に開いた会議で、全会一致でグエン・ゾアン・アイン書記の再任が決まった。任期は2025~2030年。  アイン書記は1967年生まれの58歳で、ハノイ市出身。合同兵科指...

サンG、サン・フーコック・エアウェイズをお披露目 11月1日就航 (17日)

 観光不動産開発を手掛けるサングループ(Sun Group)はハノイ市で15日夜、新たな航空会社「サン・フーコック・エアウェイズ(Sun PhuQuoc Airways=SPA)」を正式にお披露目した。  ベトナム初の「リゾート航空...

ベトナム、国連人権理事会の理事国に選出 2期連続3回目 (17日)

 国連総会は14日、国連人権理事会の理事国14か国の改選を行い、ベトナムが190か国中180か国の票を得て理事国に選出された。ベトナムの得票数はアジア太平洋グループで最多だった。任期は2026年から2028年まで。 ...

サングループ、ダナンで水上観光開発へ 投資総額560億円 (17日)

 南中部地方ダナン市人民委員会は、観光不動産開発を手掛けるサングループ(Sun Group)傘下のハロン・サン(Ha Long Sun)を、水上観光インフラ整備プロジェクトの投資主体として正式に承認した。投資総額は約9兆88...

©VIETJO ベトナムニュース 2002-2025 All Rights Reserved