ベトナムニュース総合情報サイトVIETJO [ベトジョー]
 ようこそ ゲスト様 

ベトナム映画「第三夫人と髪飾り」アッシュ・メイフェア監督インタビュー

2019/09/29 06:00 JST配信
© copyright Mayfair Pictures.
© copyright Mayfair Pictures.

(※本記事はVIETJOベトナムニュースとベトナムエンタメ情報サイト「A-TIM’s(エータイムズ)」の合同取材によるものです。)

 世界の巨匠たちがその才能を絶賛する1985年生まれのベトナム人女性監督、アッシュ・メイフェア(Ash Mayfair)氏。彼女が監督・脚本を手掛けた長編デビュー作「第三夫人と髪飾り(越題:Vo Ba、英題:The Third Wife)」が、10月11日(金)より東京都渋谷区のBunkamuraル・シネマほかで全国順次ロードショーとなる。

 この作品は、メイフェア監督の曾祖母の実話をもとに、ユネスコの世界複合遺産にも登録されたベトナム北部の秘境・紅河デルタ地方ニンビン省チャンアンを舞台に、絹の里の富豪の第三夫人として14歳で嫁いでくる主人公メイ(May)と、彼女を取り巻く愛憎、悲しみ、希望を、美しく官能的に描いた作品だ。

 同作品は、「青いパパイヤの香り」や「夏至」などを手掛けたトラン・アン・ユン(Tran Anh Hung)氏が美術監修を務め、「ブラック・クランズマン」などのスパイク・リー(Spike Lee)氏が資金援助するなど、巨匠たちのバックアップを得て作られた。

 ベトナムでは5月17日に公開されたが、撮影当時13歳だった「第三夫人」役のグエン・フオン・チャー・ミー(Nguyen Phuong Tra My)が劇中でラブシーンを演じたこととベトナムの歴史の暗部に迫ったその内容が物議を醸し、わずか4日で上映が中止された。しかし、初監督作とは思えないその確かな演出手腕が評価され、海外の映画祭などでは数々の映画賞に輝いている。

 今回、10月の公開を前に日本を訪れたメイフェア監督に、「第三夫人と髪飾り」の生い立ちや作品に込められた想いなどについて話を聞いた。

アッシュ・メイフェア監督 © copyright Mayfair Pictures.

―――「第三夫人と髪飾り」は監督のご家族の体験がもとになっているとのことですが、いつごろから、またどういったきっかけでこのお話を映画にしようと思われたのですか。

私は実際にこういう女性たちと育ってきたので、最初は小説にしようと思いました。大学で文学を専攻していたということもあって、祖父母や曾祖母たちの日記やインタビューから材料を集めて小説を書こうと思っていたのですが、ニューヨーク大学の大学院で映画を勉強していてその話をしたら、教授たちやその話をした人たちが「これは映画にしたほうがいい」と言ってくださったので、じゃあ映画にしよう、と思いました。

―――お話を文字から映像にするとなると、お金もかかる、人も動くので大変だったと思うのですが、一番大変だったことは何ですか。

まず、文字ではなく映像にするということの大変さについてですが、そもそもメディア、媒体が違うので、考え方を変えるということがとても大変でした。この女の子(主人公のメイ)に起こった1年間のことを、説得のできるかたちで90分間にまとめるということがとても大変でしたし、それに伴う様々な物質的なことも大変だったので、(完成までに)5年かかりました。

実はフルタイムでこの映画にかかわってもう6年目なのですが、お金も非常にかかりましたし、脚本に3年かけて、キャスティングもとても大変でした。特に主人公の女の子は、私が求める通りの女優さんが欲しかったので、8か月間ベトナムで探して、900人以上の女の子に会ってオーディションをしたんです。

また撮影も、人工的なものが入るのが嫌で、電気が通っていなくて道路がなくて車が通っていないようなところを探したので、(ロケ地は)山間の何もないところだったんですね。なので、撮影するのに3時間ハイキングしてそこにたどり着いて、撮影して、また3時間かけて帰ってくるという。撮影のあらゆるステップがとてもとても大変でした。

―――監督はご家族からこのお話を聞いたときに、どのような感じを受けましたか。

実際にこういう女性たちに囲まれて育ってきたので、(一夫多妻など)そういうことがあるというのは十分わかっていました。私の曾祖母は14歳で結婚させられ、祖母は14歳ではなかったのですが、かなり若いうちに家族が勝手に決めて結婚させられました。曾祖父には何人も奥さんがいたし、子供もいっぱいいて、ある意味お互いにお互いの子供を育てているような感じだったので、それが普通だと思って育っていたんですね。ですが、ベトナムを離れて、すごく若い女の子が強制的に結婚させられるのはあまりよくないことなのだということに気が付きました。

そして家族や社会における女性の役割というものについて疑問を持ち始めて、声を上げたほうがいいのではないか、と考えるようになったんです。

前へ   1   2   3   4   次へ
[2019年9月6日 ベトジョーニュース/A-TIM’s A].  © Viet-jo.com 2002-2025 All Rights Reserved. 
※VIETJOベトナムニュースは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。 免責事項
新着ニュース一覧
ダナン:地下工事中の新都市区に巨大な陥没穴、車2台落下 (6:34)

 南中部地方ダナン市アンハイ街区で建設中の新都市区案件「キャピタル・スクエア3(Capital Square 3)」に隣接するグエンコンチュー(Nguyen Cong Tru)通りで3日午後2時10分ごろ、大規模な陥没事故が発生した。 ...

コクヨ、地場ティエンロン文房具Gを子会社化へ (6:15)

 文房具やオフィス家具の製造・仕入れ・販売を手掛けるコクヨ株式会社(大阪府大阪市)は、地場大手文房具・事務用品メーカーのティエンロン文房具グループ[TLG](Thien Long Group)の

ハノイ:大気汚染対策を強化、ドローン導入など 休校も検討 (6:02)

 ハノイ市人民委員会は、大気汚染の深刻化を受け、市内の農業残渣の野焼きやごみ焼却などの取り締まりを強化することを目的として、ドローンによる監視措置と、粉じんを抑制するための噴霧装置を導入する方針を...

貧しい人々の「最期の眠り」を見届けて20年、無償で葬儀を行う男性 (11/30)

 ホーチミン市ニャーベー村には、貧しい人々や身寄りのない人々の最期を見送ることに人生のすべてを捧げてきた男性がいる。  地元の人々は、ニャーベー村74集落の長であるレ・バン・サンさんを、親しみを込...

11月のベトジョー記事10選:自然災害被害報告など (5:52)

 ベトナムでは自然災害が頻発しており、1~11月期の自然災害による死者・行方不明者は409人に上り、経済的な被害額は85兆VND(約5000億円)と推定されています。  また、11月には、観光不動産開発を手掛けるサ...

11月のベトジョー記事アクセス数ランキング (5:03)

 VIETJOベトナムニュースが11月に配信した記事のアクセス数ランキングをご紹介します。 1位:有名女優を逮捕、社長務めた不動産会社で資産横領の疑い

第1回日越外務・防衛次官級協議、安全保障分野の協力具体化 (4:22)

 東京で4日、第1回日本・ベトナム外務・防衛次官級協議(次官級2+2)が開催された。この協議は、4月に行われた石破茂元内閣総理大臣とルオン・クオン国家主席による日越首脳会談において、両国間の戦略的意思疎通...

三菱自動車、ベトナムでミッドサイズSUV「デスティネーター」発売 (4:02)

 三菱自動車工業株式会社(東京都港区)は1日、ベトナムにおいて、新型ミッドサイズスポーツ用多目的車(SUV)「デスティネーター」の販売を開始した。  今後は、他のASEAN地域や南アジア、中南米、中東、アフリ...

ワイエムジー、フンイエン技術師範大学とエンジニア育成協定を締結 (3:06)

 オートローダーやロボットシステムなどの自動化装置の設計・製作・販売を手掛ける株式会社ワイエムジー(愛知県豊橋市)は11月19日、北部紅河デルタ地方フンイエン省のフンイエン技術師範大学との間で、ロボティ...

日豊建設、ベトナム現地法人をホーチミンに設立 (2:43)

 アスファルト舗装工事や各種舗装工事などを手掛ける日豊建設株式会社(大阪府豊中市)は、ベトナム現地法人「日豊ベトナム(Nippou Vietnam)」をホーチミン市に設立した。  同社は、現地での事業拡大を目指し...

ホーチミン:メトロ1号線、25年1~6月期は8.4億円の赤字 (4日)

 ホーチミン市都市鉄道(メトロ)1号線(ベンタイン~スオイティエン間)を運行する同市メトロ1号線有限会社(HURC1)は、2025年1~6月期の監査済み財務諸表を公表した。報告によると、同期の税引後利益は▲1420億VND(...

ホーチミン:1日型デイサービスモデルの発展を奨励 (4日)

 ホーチミン市保健局はこのほど、日帰り利用の1日型デイサービスモデルの発展を奨励すると発表した。サービスの多様化を図って高齢者の心身の支援ニーズに応えるとともに、家族の負担を軽減することを目的として...

韓国系コンビニ「GS25」、400店舗達成 韓国製品に特化した戦略 (4日)

 コンビニエンスストア「GS25」を運営する韓国のGSリテール(GS Retail)はこのほど、ベトナムで展開する店舗数が400店舗に達したと発表した。  GSリテールは、2018年にホーチミン市に1号店を出店し、ベトナム...

中国人観光客、ベトナムでQRコード決済が利用可能に (4日)

 中国人観光客は2日から、ベトナム国内で越境QRコード決済「ベトQRグローバル(VietQRGlobal)」を通じて、日常的に利用しているモバイル決済アプリでQRコード決済ができるようになった。  小売店、飲食店、商...

動画配信「Clip TV」がサービス終了へ、約20年の事業に幕 (4日)

 動画配信サービス「Clip TV」が、12月31日をもってサービスを終了する。  これは、公式ウェブサイトとアプリで発表されたもので、スマートフォンやスマートテレビ向けのオーバー・ザ・トップ(OTT)サービス...

©VIETJO ベトナムニュース 2002-2025 All Rights Reserved