ベトナムニュース総合情報サイトVIETJO [ベトジョー]
 ようこそ ゲスト様 

ベトナム映画「サイゴン・クチュール」日本公開、グエン・ケイ監督インタビュー

2019/12/15 06:00 JST配信
© STUDIO68
© STUDIO68 写真の拡大

―――1960年代というと監督ご自身も生まれる前ですが、当時を描くにあたってどのような点にこだわりましたか。

何を描くにしてもリサーチはとても大切で、詳細まで調べます。私にとって幸運だったことは、とても優秀なプロダクションデザイナー、美術の方に出会えたことでした。また、当時のサイゴンに住んでいた人たちにも会いに行って、当時の様子を自分の耳で聞きました。

この映画は制作費自体が限られていたので、なるべくお金がかからないような脚本を書いて、撮影現場は2か所を当時のように再現しました。映画の中の衣装も、色使いなどもプロダクションデザイナーにお任せして作っていきました。

―――アオザイやドレスなど、衣装の柄も色もレトロでとても素敵ですよね。特にタイル柄は、ちょうど作品が公開された2017年ごろからこの柄をモチーフにしたアオザイや小物、カフェなどを現地でよく見かけるようになった気がします。レトロブームの火付け役ともなったこの作品の衣装のこだわりや、エピソードを教えてください。

自分たちがこの作品を作っているときは、「すごく好き!」という感覚しかなかったんですね。ファッションもとてもきれいだし、ゴ・タイン・バンさんも「私にお母さん役をやらせて!」と言ったぐらいなんです。やっぱり皆ああいうファッションが好きで、作っている私たち自身がとても楽しんでいました。そういう想いが自然にエネルギーとして大きくなり、どんどん伝播していき、ヒットにつながったのだと思います。

作っている間は「ああ楽しい!」、「ああきれい!」としか思っていなかったのですが、例えば服以外にセリフも昔のマダムたちが話していたような、ちょっと古い言い方を取り入れたりして。そういうものがトレンドとして生まれて、ひとつの文化になったんじゃないかと思います。

© STUDIO68

―――「サイゴン・クチュール」はSF要素もあるわけですが、タイムトラベルものにしようと思ったのはなぜですか。

この映画を作るときに、若者にたくさん観てもらえる映画にしようと思ったんです。ただ、今の若者たちにとってアオザイがテーマだとつまらない。でも、ファンタジーはすごく好きなんですよね。なので、今回はタイムトラベルを取り入れました。

―――監督が一番印象に残っているシーン、お気に入りのシーンを教えてください。

一番好きなシーンは、ニュイとアン・カイン(An Khanh、2017年のニュイ)がけんかをするところです。書いていて泣いてしまうぐらい好きです。2人のやりとりをよく聞くと、結局のところアン・カインはニュイ自身であり、他人を責めているんだけれど実は自分自身を責めていて、別人なんだけれど自己批判をしている。(アン・カイン役の)ホン・ヴァンさんも、(ニュイ役の)ニン・ズオン・ラン・ゴックさんも、このセリフを全部きちんと理解してくれて、素晴らしい演技をしてくれたからこそ、このシーンが成功したのだと思っています。

© STUDIO68

―――監督ご自身についておうかがいします。監督ご自身は、どういった経緯で映画の世界に入られたのでしょうか。脚本家、また監督として映画に携わることになったきっかけなどを教えてください。

小さいときから映画が好きだったんです。19歳の時に脚本家、助監督として「1735km」という作品に携わりました。実はこの映画はあまり成功しなかったのですが、それでも映画を作っていてすごく楽しかった。映画を作るというのは大変ですが、やっぱり楽しいんです。人生をエンジョイすることで良い作品ができると私は思っていて、あれからもう15年、16年経ちましたが、今も変わらずその精神で作っています。

―――監督にとって転機となった作品は何ですか。

自分の作品ではなく、今まで観てきた中で自分の映画人としての転機になったものの1本は、バズ・ラーマン監督の「ムーラン・ルージュ」(2001年公開)です。ミュージカル映画なのですが、映画としての要素も素晴らしいし、歌も素晴らしい。この要素は、今回の「サイゴン・クチュール」にも少し取り入れています。

もう1本はアンドレイ・タルコフスキー監督の「惑星ソラリス」(1972年公開)。スペーストラベルが好きなんですよ。1969年というのは月面着陸の年。だから「サイゴン・クチュール」では1969年を舞台にしているというのもあります。今年は2019年で、人類の月面着陸からちょうど50年。「サイゴン・クチュール」が日本で今年公開されるというのは、とても意味がありますね(笑)。

前へ   1   2   3   次へ
[2019年11月8日 ベトジョーニュース/A-TIM’s A].  © Viet-jo.com 2002-2025 All Rights Reserved. 
※VIETJOベトナムニュースは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。 免責事項
新着ニュース一覧
世界最高のリゾート、ベトナムから16部門に選出 WTAの25年版 (10:11)

 世界の観光業界の「オスカー」とも称される「ワールド・トラベル・アワード(World Travel Awards=WTA)」は、世界の観光をリードするホテルやリゾート、航空会社、旅行会社などを選出した2025年版のリストを発...

世界で最も娯楽費が安い都市、ハノイが6位 バンコク12位 (9:07)

 英国タイムアウト誌(Time Out)はこのほど、2025年版「世界で最も娯楽費が高い/安い都市トップ15」のランキングを発表した。ハノイ市は娯楽費が安い都市で6位にランクインしている。  これは、世界100都市の...

26年に注目すべき世界の旅行先トップ10、ムイネーが1位 (8:00)

 世界最大級の宿泊予約サイト「ブッキング・ドットコム(Booking.com)」はこのほど、2026年の注目の旅行先トップ10を発表した。この中で、南中部地方ラムドン省(旧ビントゥアン省)のムイネーが1位に選出された。 ...

ホーチミンの路上のライター修理店、愛好家の駆け込み寺 (21日)

 ある日の午後、60代と思われる男性が、壊れたデュポン(Dupont)製のライターを手に、ホーチミン市チョロン街区グエンチーフオン通りを訪れた。男性は、ファム・バン・コーさん(男性・72歳)の店である、古びて傾...

スーパーホテル、ハノイに26年3月17日オープン 海外2店舗目 (26日)

 ホテル運営を手掛ける株式会社スーパーホテル(大阪府大阪市)は2026年3月17日、同社100%出資のベトナム現地法人であるスーパーホテル・ベトナム(SUPER HOTEL VIETNAM)が運営する新店舗「スーパーホテルハノイ(S...

タイのアマタ、フート省で新たな工業団地を開発へ (26日)

 北部地方フート省人民委員会は23日、タイのアマタ(Amata)に対し、ドアンフン工業団地(別称:アマタシティ・フート=Amata City Phu Tho)の投資登録証明書を交付した。  同案件はドアンフン村(xa Doan Hung)...

クアンニン省など4省で党委書記・人民委主席が交代 (26日)

 各地方自治体の人事異動により、東北部地方クアンニン省と同カオバン省の共産党委員会書記、西北部地方ディエンビエン省と南中部地方カインホア省の人民委員会主席の4人が交代となった。 ◇クアンニン省共産...

「ベトナム食文化名人」の称号、全国規模で初の授与 (26日)

 ホーチミン市で23日、2025年の「ベトナム食文化名人」の称号の授与式が行われた。食分野に特化した称号の授与が全国規模で行われたのは初めて。  「食文化名人」の称号は15人に、「食文化名匠」の称号は6人...

ベトナム・モビリティショー2025、ハノイで12月26日から開催 (26日)

 ハノイ市ドンアイン村の国家展示センター(VEC)で12月26日(金)から28日(日)まで、モビリティ分野の国際展示会「ベトナム・モビリティショー2025(Vietnam Mobility Show 2025)」が開催される。  同展示会は、...

ベトナム企業、アマゾン経由の輸出拡大 ブランド重視へ転換 (26日)

 アマゾングローバルセリング・ベトナム(Amazon Global Selling Vietnam)はこのほど、国境を越えた電子商取引(eコマース=EC)に参加するベトナム企業の成長と成功事例をまとめた年次レポートを発表した。  ...

又吉直樹×ヨシタケシンスケ共著「その本は」、ベトナム語版を出版 (26日)

 お笑い芸人で芥川賞作家の又吉直樹氏と、人気絵本作家のヨシタケシンスケ氏による共著「その本は」のベトナム語版がこのほど翻訳出版された。ベトナム語版では、「本の王国の奇跡(Dieu ky dieu o vuong quoc Sa...

ホーチミン:レロイ通りの改修工事が完了、都市景観が改善 (26日)

 ホーチミン市サイゴン街区(旧1区)のレロイ(Le Loi)通りに立ち並ぶ、老朽化した建造物群の改修工事がこのほど完了した。クリスマスと新暦正月に向けて、ペンキの塗り直しや屋根の改修が急ピッチで進められ、市中...

ハイフォン:6.5万DWTの貨物船が進水、ベトナムの建造で最大級 (26日)

 造船工業総公社(ShipBuilding Industry Corporation=SBIC、旧ビナシン=Vinashin)傘下のナムチエウ造船(NASICO)は北部紅河デルタ地方ハイフォン市で24日、貨物船「チュオンミン・ドリーム02(Truong Minh Dream...

外務省「第19回日本国際漫画賞」、ベトナムの作品が優秀賞 (26日)

 日本の外務省が主催する「第19回日本国際漫画賞」で、ベトナム人作者・原作者の作品が優秀賞を受賞した。  今回は、110か国・地域から過去最多となる738作品の応募があった。また、トーゴやネパールなどの6...

極東貿易子会社のヱトー、ホーチミンに支店開設へ (26日)

 産業設備や産業素材、機械部品などの事業を手掛ける極東貿易株式会社(東京都千代田区)の100%出資子会社であるヱトー株式会社(神奈川県横浜市)は、100%出資海外子会社のヱトー・ソリューションズ・ベトナム(ET...

©VIETJO ベトナムニュース 2002-2025 All Rights Reserved