ベトナムニュース総合情報サイトVIETJO [ベトジョー]
 ようこそ ゲスト様 

大嫌いだった家業の茶栽培で起業した女性

2022/03/13 10:07 JST配信
(C) vnexpress
(C) vnexpress 写真の拡大
(C) vnexpress
(C) vnexpress 写真の拡大

そのコースで講師は学生に、自分が最も精通している、つまり「目を瞑ってでもできる」分野での起業を勧めた。講師に精通した分野を聞かれたバンさんは「茶摘みです。小さい頃、昼間に茶摘みをしながらあまりにも眠くなり、目を瞑ったまま摘んでいました」と答えた。講師は笑いながら「それなら茶業を選びなさい」と伝えた。しかしバンさんは慌てて「お茶は嫌なんです」と返したのだった。

 その夜、バンさんは世界で初めて無農薬・無肥料のりんご栽培に成功した木村秋則氏の「奇跡のりんご」の動画を見返し、有機農業に関する本を読んだ。そして、故郷に帰って茶の自然栽培を始めることに決めた。

 2019年3月、バンさんは荷物をまとめて都市部を離れた。バンさんが起業のことを姉に報告すると、姉は「これから大変なことがたくさんあると思うけど、一番大変なのは両親の同意を得ることよ」と警告した。姉の警告通り両親は怒り、その年は一度も口をきいてくれなかった。

 実家の茶畑では自然栽培に着手することができず、バンさんは村の住人から面積2880m2の土地を借りた。毎日両親に隠れて出かけ、バイクで8km、徒歩で1kmも丘を登り、土地を耕して雑草を取り除いた。作業が終わるとこっそり家に帰り、清潔な衣服に着替えてから両親の前に顔を出す日々だった。

 土壌の湿度を保つ除草作業の他に、バンさんは茶の木の根元を覆うためにわらと緑肥を集めた。さらに、その場で肥料を作るために間作として様々な植物を植え、大豆を培養し、熟した果物を加えるなどして、有機農業に必要な土壌の栄養を蓄えていった。

 化学薬品を使わないため、最初に植えた茶の木は発芽したばかりの茶芽が全て虫に食べられ、アブラムシに覆われてしまった。茶の木の手入れをするたび、バンさんの身体のあちこちに虫がくっついた。洗っても虫がとれず、小川に飛び込み、服が乾くのを待ってから再び作業を続けた。

 当初、近所の人たちは「両親に良い教育を受けさせてもらったのに、都会を捨てて田舎に戻ってくるなんて」とバンさんを叱っていたが、バンさんが茶の木よりも他の植物を育て、殺虫剤を使わずに虫まみれになっている様子を見て、「狂っている」と噂するようになった。「私はただ隅の方に身をかがめ、噂話や両親からの激しい反対は聞こえないふりをしました」とバンさんは当時を回想した。

 バンさんは地元で起業のトレーニングコースや茶栽培に関する専門講座に参加し、また読書やインターネットで研究を続け、問題の解決策を模索した。

 ある時、ハノイ市で行われた茶のプロモーションフェアを訪れた際、バンさんは茶に目がないという軍人に出会い、2人は恋に落ちた。夫は自宅を離れて勤めていたため、結婚後もバンさんは相変わらず1人で茶畑を管理していた。

前へ   1   2   3   次へ
[VnExpress 07:00 10/02/2022, A].  © Viet-jo.com 2002-2025 All Rights Reserved. 
※VIETJOベトナムニュースは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。 免責事項
この記事に関連するおすすめの記事
新着ニュース一覧
国会、憲法改正の決議採択 7月1日から地方自治体を2層構造に移行 (17:31)

 国会は16日、憲法の一部条項を改正・補足する決議を採択した。同決議は即日施行された。  決議によると、地方自治体は6月30日をもって郡レベルの行政区(省・中央直轄市傘下の市、区=quan、郡=huyen、町=...

ホーチミン、米AMDとAI・ハイテク協力促進で覚書 (15:59)

 ホーチミン市人民委員会は12日、半導体設計大手の米アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(Advanced Micro Devices=AMD)との間で、技術協力に関する覚書を締結した。式典にはチャン・ホン・ハー副首相も出席した...

ベトナム政府、国家戦略技術32分野を公表 AI・バイオ医療など (15:45)

 ファム・ミン・チン首相は12日、国家の戦略的技術および戦略的技術製品に関するリストを定める決定第1131号/QD-TTgに署名した。  今回の決定では、国家の持続的な発展と技術革新を推進するための、10の戦略...

世界のベトナム人街を訪ねて【プラハ編・後編】 (15日)

(※本記事はVIETJOベトナムニュースのオリジナル記事です。) 【ロンドン編】はこちら 【パリ編】は

ベトナムAI産業のGDP貢献、40年までに最大1300億USD規模に (14:41)

 財政省傘下のベトナム国家イノベーションセンター(NIC)が国際協力機構(JICA)およびボストン・コンサルティング・グループ(BCG)と協力して発表した報告書「ベトナム人工知能(AI)経済2025」によると、AI産業は今...

信頼性の高い保険会社トップ10、バオベトが生保部門で首位キープ (13:57)

 ベトナム評価レポート社(ベトナムレポート=Vietnam Report)は、2025年における信頼性の高い保険会社トップ10を発表した。この中で、バオベトグループ[BVH](Bao Viet Group)は生命

クオン国家主席、越訪のリトアニア大統領と会談 (6:09)

 ルオン・クオン国家主席は12日、リトアニアのギターナス・ナウセーダ大統領と会談した。1992年の外交関係樹立以来、同国大統領がベトナムを公式訪問したのは今回が初めて。  両首脳は会談で、今回の公式訪...

7月1日施行の社会保険法、加入対象者を拡大 外国人関連規定も (6:01)

 2024年社会保険法(法律第41号/2024/QH15)が、2025年7月1日に施行される。これは2014年社会保険法(法律第58号/2014/QH13)に置き換わるもので、社会保険の加入対象者が拡大される。  2024年社会保険法では、...

個人事業主への電子請求書義務化、飲食店が便乗で一斉値上げ (5:41)

 6月以降、ホーチミン市やハノイ市にある多くの飲食店で、ブン、フォー、バインミーなどの価格が一斉に引き上げられている。店主らは値上げの主な理由として、「納税義務の発生」を挙げている。  店主らは、...

ベトコムバンク、東南アジアの有力ブランドトップ30に初選出 (5:17)

 英市場調査会社カンター(Kantar)が発表した「東南アジアのブランド価値トップ30ランキング」2024年版で、ベトコムバンク[VCB](Vietcombank)がベトナム企業として唯一ランクインを果

畜産大手CPベトナムの「病畜の肉」流通疑惑、違反の3店舗に罰金 (5:00)

 タイ系畜産大手CPベトナム(CP Viet Nam)が病気の豚や鶏の肉を販売していたとソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)上で告発されたことを受け、南部メコンデルタ地方ソクチャン省農業環境局は11日、検査...

ベトナム航空、スカンジナビア航空と提携 北欧路線の接続強化 (4:47)

 全日空ANAが出資するベトナムのフラッグキャリアであるベトナム航空[HVN](Vietnam Airlines)は13日、スカンジナビア航空との間で、ベトナムと北欧(デンマーク、ノルウェー、スウェ

ダナン:半導体研究開発ラボ建設を承認、投資総額98億円 (3:07)

 南中部沿岸地方ダナン市人民委員会は、半導体向け先端パッケージング技術の研究開発(R&D)を目的とした実験施設プロジェクトへの投資方針を承認した。  プロジェクトの投資主は、半導体や人工知能(AI)分野の...

ハノイ:錯視展by杉原厚吉、ベトナム初開催 6月28日から (14日)

 国際交流基金ベトナム日本文化交流センターは、6月28日(土)から8月24日(日)まで、展覧会「錯視展」をベトナムで初開催する。同展覧会では、視覚認知と数学的創造性が融合した全く新しいアート体験を提供し、「...

ハノイ:建国80周年、9月2日に花火打ち上げ 市内5か所で (14日)

 ハノイ市は、9月2日(火)の建国記念日に打ち上げ花火を実施する計画を明らかにした。  これは、8月革命80周年(1945年8月19日~2025年8月19日)と建国80周年(1945年9月2日~2025年9月2日)を祝う記念事業の一環...

©VIETJO ベトナムニュース 2002-2025 All Rights Reserved