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ロアンさんはナム君が4歳の時に夫と離婚した。ロアンさんは子供を連れて家を出て、部屋を借りた。苦しい生活の中、ロアンさんは息子の学費を稼ぐために昼夜を問わず働いた。「でも、限界でした」とロアンさんは語る。
ナム君の学費は毎月1000万~2000万VND(約5万5000~11万円)かかり、学費に充てるお金が足りない時は勉強を中断しなければならないこともあった。さらに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行した時にはロアンさんの仕事も影響を受け、ナム君を田舎の祖父母の元に預けたという。
自閉症児は、毎日適切な療育を受けなければ、行動障害が悪化してしまう。新型コロナの流行が落ち着いた後、ナム君は母親の元に戻ったが、他人の携帯電話を奪おうとしたり、興奮すると手を叩き続けたりするといった行動が癖になっていた。
そこでロアンさんは、ハノイ市ロンビエン区で寄宿型の療育センターを見つけ、ナム君を通わせることにした。センターでしばらく療育を受けたナム君は、多くの進歩の兆しを見せ、自分の要求をたくさん言葉にできるようになった。
毎週の送り迎えで母親と一緒にロンビエン橋を渡っていたナム君は、ロンビエン橋に突然心を打たれた。そんな中、センターの活動の一環として描いた橋の絵が、思いがけず200万VND(約1万1000円)で落札された。
「当時、センターから美術の先生をもう1人雇ってはどうかと言われました。私もぜひそうしたかったのですが、経済的にどうすることもできませんでした」とロアンさんは話す。
2024年の夏、ロアンさんは学費の約1200万VND(約6万6000円)が支払えなくなり、再び息子を退学させざるを得なくなった。当初、ナム君は自宅で行儀良く過ごし、野菜の下処理や掃き掃除など、色々なことができるようになった。
しかし8月になると、ロアンさんは息子の性格が以前よりも怒りっぽくなったことに気付いた。そして、怒ると母親の両腕を引っかくようになった。「一番ひどかった時は、息子が自傷行為をして彼の両手が噛み痕だらけになってしまったんです」とロアンさんは語る。
息子が思春期に入ったのだと察したロアンさんは、適切な環境の必要性を痛感していたが、自分に十分な知識がないことも認めざるを得なかった。専門家によれば、ベトナムでは、自閉症児は幼少期には積極的な支援を受けられるものの、思春期から成人期にかけては支援を受けられるセンターが少なく、保護者も子供を指導する十分な知識を持っていないのだという。
ハノイ市から約70km離れた東北部地方バクザン省にある療育センターを紹介されたロアンさんは、遠方でも試してみることに決めた。ナム君がセンターに入って1か月後に訪ねてみると、ロアンさんは息子がたくさん運動してエネルギーを発散していることで以前よりも痩せ、同時に規律性も向上していることに気付いた。