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ベトナムを代表する考古学者・人類学者で、音楽家としても知られるグエン・ラン・クオン(Nguyen Lan Cuong)氏が2025年5月6日、ハノイ市のベトナム国家大学ハノイ校(ハノイ国家大学)医科薬科大学附属病院で死去した。84歳だった。
クオン氏は、辞書編纂者・作家で「人民教師」の称号を授与された故グエン・ラン(Nguyen Lan)氏の息子だ。クオン氏は兄と姉、弟たちとともに、きょうだい8人で父親に倣い、学者一族としての伝統を築き上げた。
クオン氏の弟で、一家の七男であるグエン・ラン・チュン(Nguyen Lan Trung)氏は、家族の写真を静かに見つめながら、この世を去ったばかりの兄を思い、感情を抑えきれずにいる。
現地紙の取材に対してチュン氏は、兄の死は家族にとって大きな喪失であり、病気の発見が遅れたことを皆が悔やみ、悲しみに暮れていると語る。
チュン氏によれば、クオン氏が亡くなる3か月ほど前、一家の六男で、元ハノイ医科大学学長・元ベトナム心臓血管研究所所長であるグエン・ラン・ベト(Nguyen Lan Viet)氏が、クオン氏の健康状態に異変を感じ、病院を受診させたのだという。
「検査の結果、兄は末期の胃がんと診断されました。家族はその知らせを聞いて悲しみましたが、それでも兄は『大丈夫だよ』と私たちを励まし、家族があれこれ考えたり心配したりしないよう、明るい話をして笑わせてくれました。おそらく、兄は科学の力を信じ、病は乗り越えられると楽観的だったのでしょう。でも、医療従事者が家族にいながら、末期になるまで病気に気づけなかったことが残念でなりません」とチュン氏は話す。
チュン氏によれば、きょうだいの中で最も陽気だったのがクオン氏で、彼はいつも家族に笑いをもたらし、きょうだいの絆を強め、その明るさとポジティブさで誰からも愛される存在だったという。