ベトナムニュース総合情報サイトVIETJO [ベトジョー]
RSS
Login
 ようこそ ゲスト様 
VietJo ID

【第5回】障がい者雇用促進に携わって得た学び・気づき

2021/10/01 10:00 JST配信

こんにちは、福崎雄生(ふくざきゆうき)と申します。今回はコラム最終回になるので、2020年3月まで所属していた障がい者の雇用創出・自立支援を手掛けるIT企業IT企業Enablecode での業務を通じて得た学びや気づきについて書いてみたいと思います。

Enablecode は障がい者の方々と雇用契約やフリーランス契約を結び、仕事を通じた収入獲得・社会での活躍による自信醸成によって、経済的・精神的な自立のためのきっかけ提供を行っています。

事業内容については、過去のコラム で触れておりますので、お読みいただけると幸いです。

Enablecodeの活動を通じて得た学び・気づき

ベトナムでの活動では、多くの学び・気づきを得ることができました。今回は、その中から3つに絞ってご紹介したいと思います。

ソーシャルビジネスの可能性とシビアさ

第一回目のコラム で触れたのですが、もともとソーシャルビジネス*に携わってみたいという思いがあり、幸運にも社会的企業であるEnablecodeで働くご縁に恵まれました。

【ソーシャルビジネスとは】

ソーシャルビジネスとは社会問題解決を目的とした事業で、その領域は貧困や差別、環境問題など、多岐にわたります。最大の特徴は、寄付金などの外部資金に頼らず自社で事業収益を上げることで継続的な社会支援を可能にしている点です。

BORDERLESS Japan 「起業して社会問題を解決する!ソーシャルビジネスとは? 」より引用

日本で地方創生に関わる仕事をしていた際に、社会課題・地域課題の解決に向けて様々な事業・取り組みがあることを知りました。同時に、それらの多くは寄付や外部資金(主に補助金など)によって成り立っており、寄付・外部資金が途絶えると継続が困難になることが課題であることを知りました。

社会課題は根が深く、その解決には地道な取り組みの継続が重要であることから、社会支援と収益獲得を両輪で回しながら、継続的に社会にインパクトを生み出すソーシャルビジネスが近年一層注目を集めています。そして、Enablecodeで手掛けるソーシャルビジネスを通じて、その可能性を実感することができました。

特に、Enablecodeの BPO事業 では、ビジネスが拡大するほど、収入を得て自立できる障がい者の方々が増えていくことを目の当たりにして、社会的な価値と、経済的な価値を同時に生み出すことが可能であることを身をもって感じることができました。

一方で、ビジネスであるがゆえのシビアさに戸惑うこともありました。

Enablecodeでは既定の仕事がこなせない障がい者の方には、仕事を依頼すること(≒手を差し伸べること)ができません。この点が慈善活動とは異なる点で、事業収益で成り立つ企業という特性上仕方ないことだと思うのですが(※どちらが良い悪いという話でもなく)、当初は、「支援できる人を選んでいる」「支援できる人が限られている」ような気がして戸惑いを覚えました。しかし、様々な慈善団体やNPOの方々と接する中で、最終的にそれでもよいのだと腑に落ちました。

例えば、重度の障がい者の生活支援など、世の中にはどうしても寄付・外部資金に頼らなければ成り立たない活動があることも知ったのですが、そういった取り組みに限りある寄付・外部資金を充てられる状況を目指していくことが重要だと考えられるようになりました。

つまり、同じ障がい者支援という取り組みであっても、できる限り広い範囲で寄付・外部資金に頼らなくてもよいソーシャルビジネスとして持続可能な運営を目指し、資金的な援助が真に必要な取り組みに寄付・外部資金が回る状態が理想的だと捉えました。

Enablecodeの取り組みだけに焦点を絞らず、よりマクロな視点に立ち、同じ社会課題の解決に向けて多様な団体が活動していることを考えると、各団体が最善を尽くしつつ団体同士で手を取りながら、一人でも多くの障がい者支援に繋げることが重要だと考えています。

Enablecodeの代表も「社会課題解決にはエコシステムの構築が重要である」といつも言っており、実際に関連団体との連携も積極的に推進していました。私もそういった取り組みに関わる中で、実際に多種多様な団体が存在し、有機的に連携していることを知りました。

少し余談になりますが、NPOとの連携を広げる活動の中で、「ベトちゃんドクちゃん」で知られているグエン・ドク氏とご一緒する機会にも恵まれ貴重な経験となりました。

自立支援のさじ加減(相手への寄り添い)の難しさ

Enablecodeでは障がい者の方々に、仕事を通じた自信の積み重ねにより、精神的にも自立して頂くことも重視していました。Enablecodeの代表は「過度な支援は本人の成長機会を奪うことになる。一方で、必要な支援ができないと仕事が進捗せず逆に自信喪失に繋がることもあるため、適度なバランスでサポートすることが肝要だ」と言っていました。

私自身、現地での活動を通じて、障がい者という集団として考えるのではなく、一人ひとりの置かれた状況や考え方に配慮し、支援する側・それを受ける側が同じ目線に立つことが何より大切だと感じました。実際に、障がい者支援施設や個人のご自宅を訪問し、会話を積み重ねることで相互理解を図りながら、業務をフォローすることを心がけました。相手の方が少しずつできることが増えて喜んでいる姿をみると、私もとても嬉しい気持ちになりました。

上記で触れたことは突き詰めると「相手のことを考えて行動する」ということだと思います。そんなことは子どもの頃に教わる人として当たり前のことなのですが、改めて日常を思い返してみると、実際にはそれができていないこともままあるなと感じたことを覚えています。当時の私にとっての非日常に触れることで改めて内省することができ、相手への配慮・寄り添いを大切にしたいと一層強く思うきっかけとなりました。

障がい者雇用がもたらす可能性

日本での地方創生業務を通じて、地域や地元企業の成長を阻む根本的な原因は慢性的な人手不足であると感じました。人口構造として少子高齢化が加速する中、その数少ない若者たちが大学や就職口を求めて県外に出るため、労働力人口の減少に歯止めがかからないのが大きな課題だと理解しています。

私自身がIT企業で業務経験を積んできたこともあり、Enablecodeで働く前までは人手不足・労働力不足の解消はIT・ロボット活用による業務自動化・省人化するしかないだろうと思い込んでいました。

しかし、Enablecodeでの活動を通じて、社会側に障壁があるがゆえに働きたくても働けない人が多くいることを知り、何よりそういった障がい者の方々が社会で活躍しはじめる瞬間にたくさん立ち会うことができたことで考え方が変わりました

もちろんIT・ロボットの活用は労働力不足を補う効果的な手段ですが、そもそもの労働力人口を増やすということにもまだまだ打ち手があり、その一つが、障がい者雇用の創出だと確信することができました。

日本国内でも、政府中心に障がい者雇用創出に向けて様々な取り組みが進められていますが、まだまだ課題が多く残っています。社会側にある障害を取り除き、一人ひとりが活躍できる環境を整えることで、労働力不足を補うことができたらそれほど素晴らしいことはないと思います。遠くない未来に、私もそういった取り組みに寄与できるようになりたいと考えるようになりました。

今後の自身の取り組みについて

冒頭お話した通り、コロナが流行り始めた2020年4月時点で帰国しEnablecodeを離れているのですが、帰国後もプロボノとして国内NPOでの活動を通じて障がい者雇用に関与させて頂いていました(自身の転職を機に、その活動も現在は離れてしまっているのですが)。

私自身、地方出身ということもあり地方の活性化に関心があり、いわゆる地方創生には地域産業を盛り上げることが不可欠だと理解しています。その上で、労働力人口の減少は避けては通れない課題であるため、その解消に向けて障がい者の方々の活躍の場(就労機会)を増やすというアプローチで僅かにでも貢献していけるようになりたいなと考えております。

最後になりますが、Enablecodeでは貴重な経験を積むことができ、多くの気づき・学びを与えて頂きました。これらの学びや気づきを今後の活動に繋げていくことが、お世話になった方々への恩返しになると信じて行動していきたいと思います。

Enablecodeのメンバへの感謝の意も込めて、帰国前に撮影した写真を載せたいと思います。

ベトナムにおける障がい者雇用創出の世界に飛び込んでみて 」を最後までお読みいただきありがとうございました!!

著者紹介
福崎雄生
2019年7月よりホーチミンに移り、障がい者雇用創出を目的としたベトナム国内の社会的企業にて活動をしています。みなさまにとっても日頃とは少し違った視点でベトナムを捉える機会になるように、現地での学びや気付きを発信してまいります。
著者略歴:1990年生まれ、愛媛県今治市出身。立命館大学卒業。日系IT企業勤務(官公庁向けシステム開発 – 沖縄県の地方創生プロジェクト – 研修の一環でベトナムの社会的企業へ)
>> Facebookページはこちら

>> LinkedInはこちら
ベトナムにおける障がい者雇用創出の世界に飛び込んでみて
その他の記事はこちら>
© Viet-jo.com 2002-2026 All Rights Reserved. 
※VIETJOベトナムニュースは上記の各ソースと自社過去記事を参考に記事を編集・制作しています   利用規約   免責事項
新着ニュース一覧
プラリサイクルのesa、越スタートアップ加速プログラムに採択 (3:16)

 プラスチックのリサイクルを中心とした環境事業を展開する株式会社esa(東京都千代田区)は、日本政府の資金提供のもと、ベトナム国家イノベーションセンター(NIC)と国連開発計画(UNDP)が共同運営するスタートア...

ベトナム武術「ボビナム」で女性支援、日本プロジェクト始動 (2:09)

 女性と少女のエンパワーメントを推進する国際プロジェクト「ガーディアン・ガールズ・ボビナム(GGV)」の日本プロジェクトが発足した。ベトナム発祥の伝統武術「ボビナム」を通じて、女性と少女が自らを守り、社...

条件付き事業分野を142業種に削減、政府が新決議公布 (20日)

 政府は、投資法に規定されている条件付き事業分野の削減に関する決議第66.17号/2026/NQ-CPを公布した。これにより、条件付き事業分野は従来の198業種から142業種へと削減される。同決議の有効期間は2026年7月1...

ニンビン省の洞窟に眠る国宝、ベトナム唯一の羅漢磨崖仏 (17日)

 北部紅河デルタ地方ニンビン省のフォンフー寺にあるリエンホア洞窟には、ベトナムで最もユニークな岩壁の彫刻群があり、このほど国宝に指定された。これは、600年以上の歴史を持つ18体の羅漢の磨崖仏で、ベトナ...

ホーチミン:外国人が購入・所有可能な住宅案件リストに6件追加 (20日)

 ホーチミン市人民委員会はこのほど、外国の組織・個人による購入・所有が可能な住宅案件リストに、新たに6件を追加した。  6件のうち5件が、2025年7月にホーチミン市と合併した旧ビンズオン省に立地する。...

ハノイ市、ホンダやLGと電動バイク電池交換網1000か所整備へ (20日)

 ハノイ市人民委員会は19日、同市建設局、韓国の多国籍財閥LGグループ傘下で世界有数の電池メーカーであるLGエナジーソリューション(LG Energy Solution)、本田技研工業株式会社(Honda、東京都港区)との間で、同...

台湾ミルクティー「Ten Ren」、7年ぶりにベトナム市場再参入 (20日)

 台湾のミルクティー専門店「Ten Ren(テンレン、天仁茗茶)」が、約7年ぶりにベトナム市場に再進出し、近くホーチミン市にも出店することが明らかとなった。  同ブランドはかつて、ベトナムで大規模展開した...

国家標準戦略を承認、30年までに75%を国際標準と調和 (20日)

 ホー・クオック・ズン副首相が承認した2026~2035年の国家標準戦略によると、2030年までにベトナム標準の75%を国際標準や地域標準、先進国の標準と調和させることを目指す。これによりイノベーションを促進し...

ビングループ、国道拡張プロジェクト着工 投資総額9800億円 (20日)

 ハノイ市人民委員会と不動産開発を中核とする民間複合企業ビングループ[VIC](Vingroup)は19日、環状1号線からカウゼー(Cau Gie)交差点に至る国道1A号線拡張プロジェクトの着工式を

ダナン空港T2拡張プロジェクトが着工、旅客処理能力を年600万人に (20日)

 南中部地方ダナン市ダナン国際空港の国際線ターミナルを運営するダナン国際ターミナル投資開発(Da Nang International Terminal Investment and Operation=AHT)と同市人民委員会は19日、同空港の国際線旅客タ...

ビエンホア〜ブンタウ間高速道路、全線開通 9人乗り未満.. (20日)

 東南部地方ドンナイ市と旧バリア・ブンタウ省(現在はホーチミン市と合併)を結ぶビエンホア〜ブンタウ間高速道路の残りの区間が18日に暫定開通し、全長54kmの全線が通行可能となった。これにより、移動時...

タイ海軍の艦船がホーチミン寄港、越タイ外交樹立50周年で (20日)

 タイ王国海軍の哨戒艦「HTMS Prachuap Khiri Khan」が18日、ホーチミン市のニャーロン港に寄港した。同艦は23日までの日程で、同市に滞在する予定となっている。  今回の訪問は、ベトナムとタイの外交関係...

ゲアン省:故ホー・チ・ミン主席生母の墓地に「9段の滝」完成 (20日)

 北中部地方ゲアン省人民委員会と地場系コングロマリット(複合企業)T&Tグループ(T&T Group)は18日、同省キムリエン村(xa Kim Lien)の特別国家級遺跡区にある故ホー・チ・ミン主席記念地区で、「9段の滝」プロジ...

無認可保育施設での男児虐待死事件、ベビーシッターに禁固20年 (20日)

 南中部地方クアンガイ省人民裁判所は18日、生後13か月の男児を虐待し死亡させたとして、殺人罪に問われていたベビーシッターのグエン・ティ・クエン被告(女・41歳)に禁固20年の第一審判決を下した。  起訴...

札幌市、ベトナム人バス運転手の育成開始 自治体支援で全国初 (20日)

 北海道札幌市は、地元のバス運転手不足に対応するため、外国人運転手を育成し採用するプロジェクトを開始した。地方自治体が自ら外国人バス運転手の育成を支援するのは日本初の試みとなる。最初の採用国として...

©VIETJO ベトナムニュース 2002-2026 All Rights Reserved