ベトナムニュース総合情報サイトVIETJO [ベトジョー]
 ようこそ ゲスト様 

国内初のHIV感染者確認から30年、検査と治療の多様化でHIV撲滅目指す

2020/12/05 05:03 JST配信
(C) Hai quan
(C) Hai quan

 ベトナムで初めてHIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染者が確認されたのは、今から30年前の1990年のことだ。

 国内初の患者はホーチミン市に住む当時30歳の女性で、結婚を控えていた交際相手の男性から感染した。感染が確認されてから、女性は経過観察を受けながら1997年に抗HIV薬(antiretroviral drug=ARV)の投薬を開始し、30年が経った現在も状態は安定しており、エイズを発症することなく普通の生活を送っている。

 保健省HIV/エイズ予防局によると、初めて感染者が確認された1990年から現在までに生存している国内のHIV感染者数は21万3008人、HIV感染による死亡者数は10万7812人となっている。また、年平均の新規感染者数は1万1000人で、毎年2800人の感染者が死亡しており、多くは30歳以下の若年層となっている。HIV感染は東南部地方と南部メコンデルタ地方の男性に顕著だ。

 2020年1~8月期のHIV新規感染者数は7090人、死亡者数は1392人だった。新規感染者数の年齢層は16~29歳(45%)と30~39歳(31%)に集中している。主な感染経路は、◇性行為による感染(76.4%)、◇血液を介した感染(11.9%)、◇母子感染(1.1%)となっており、中でも男性の同性間の性行為による感染が深刻となっている。

 一方、同局のホアン・ディン・カイン副局長によると、国内におけるHIV/エイズ検査は医療機関での検査のほか、コミュニティ規模での検査や自己検査など多様化しており、新規感染者の発見に寄与している。

 また、コミュニティにおける組織やHIV/エイズ予防部署などの活動強化のほか、薬物中毒治療薬(オピオイド)の研究も継続して行われ、HIV/エイズの治療環境は日々変化している。現在、国内では5万2000人のHIV患者がオピオイド系の合成鎮痛薬メサドンにより治療を受けており、高い効果が認められている。

 ベトナムは直近10年間で、◇HIV新規感染者の減少、◇エイズ発症者数の減少、◇HIV/エイズによる死亡者数の減少という「3減」を果たしており、英国、ドイツ、スイスと並びARVによる治療で高い効果をあげている国として評価されている。2000年から現在までにおよそ50万人のHIV感染を予防し、20万人のエイズによる死亡を阻止してきた。

 しかしながら、ベトナムにおけるHIV/エイズによる死亡者数は依然として高い水準にあり、感染経路の多様化や感染ハイリスク者の増加は国民の健康や社会経済に大きな影響を及ぼしているといえる。また、疾病関連のセンターなどの新規設立や合併、過去にHIV/エイズに関するプログラムやプロジェクトに携わった人材の異動により、省や郡レベルでHIV/エイズ予防活動の人材不足が課題となっている。

 こうした中、2020年8月14日、2030年までにHIV新規感染者を年間1000人未満に削減することを目標に掲げた国家戦略「2030年エイズ撲滅」に関する首相決定が公布された。この戦略では、オピオイド系治療薬による治療の強化、感染ハイリスク者の曝露前予防内服(PrEP)処方、コミュニティ規模検査や自己検査、性行為パートナーや麻薬中毒者の注射針共有者の検査など、HIV検査サービスの多様化を促進し、HIV感染の早期発見を目指す。

 このほか、HIV感染者の即時治療、日常的な治療、数か月分まとめての内服薬の処方、HIVと同時に感染するリスクのある結核や肝炎、性病の同時治療などを強化することでHIV/エイズ治療の質向上を図る。

[Hai Quan 14:51 21/11/2020 / Nguoi Lao Dong 11:02 19/11/2020, T].  © Viet-jo.com 2002-2025 All Rights Reserved. 
※VIETJOベトナムニュースは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。 免責事項
新着ニュース一覧
デジタル技術産業法を可決、デジタル資産とAIの法的根拠を制度化 (16日)

 国会は14日、デジタル技術産業法を賛成多数で可決した。同法は2026年1月1日に施行される。これにより、デジタル資産と人工知能(AI)に関する法的根拠が初めて制度化された。  同法の対象となるデジタル資産...

国会、改正特別消費税法を可決 加糖飲料も対象に (16日)

 国会は、改正特別消費税法を賛成多数で可決した。同法は2026年1月1日に施行される。  同法によると、加糖飲料については、ベトナム国家基準における清涼飲料水の定義に該当し、糖分が100mLあたり5gを超える...

国会、憲法改正の決議採択 7月1日から地方自治体を2層構造に移行 (16日)

 国会は16日、憲法の一部条項を改正・補足する決議を採択した。同決議は即日施行された。  決議によると、地方自治体は6月30日をもって郡レベルの行政区(省・中央直轄市傘下の市、区=quan、郡=huyen、町=...

世界のベトナム人街を訪ねて【プラハ編・後編】 (15日)

(※本記事はVIETJOベトナムニュースのオリジナル記事です。) 【ロンドン編】はこちら 【パリ編】は

ホーチミン、米AMDとAI・ハイテク協力促進で覚書 (16日)

 ホーチミン市人民委員会は12日、半導体設計大手の米アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(Advanced Micro Devices=AMD)との間で、技術協力に関する覚書を締結した。式典にはチャン・ホン・ハー副首相も出席した...

ベトナム政府、国家戦略技術32分野を公表 AI・バイオ医療など (16日)

 ファム・ミン・チン首相は12日、国家の戦略的技術および戦略的技術製品に関するリストを定める決定第1131号/QD-TTgに署名した。  今回の決定では、国家の持続的な発展と技術革新を推進するための、10の戦略...

ベトナムAI産業のGDP貢献、40年までに最大1300億USD規模に (16日)

 財政省傘下のベトナム国家イノベーションセンター(NIC)が国際協力機構(JICA)およびボストン・コンサルティング・グループ(BCG)と協力して発表した報告書「ベトナム人工知能(AI)経済2025」によると、AI産業は今...

信頼性の高い保険会社トップ10、バオベトが生保部門で首位キープ (16日)

 ベトナム評価レポート社(ベトナムレポート=Vietnam Report)は、2025年における信頼性の高い保険会社トップ10を発表した。この中で、バオベトグループ[BVH](Bao Viet Group)は生命

クオン国家主席、越訪のリトアニア大統領と会談 (16日)

 ルオン・クオン国家主席は12日、リトアニアのギターナス・ナウセーダ大統領と会談した。1992年の外交関係樹立以来、同国大統領がベトナムを公式訪問したのは今回が初めて。  両首脳は会談で、今回の公式訪...

7月1日施行の社会保険法、加入対象者を拡大 外国人関連規定も (16日)

 2024年社会保険法(法律第41号/2024/QH15)が、2025年7月1日に施行される。これは2014年社会保険法(法律第58号/2014/QH13)に置き換わるもので、社会保険の加入対象者が拡大される。  2024年社会保険法では、...

個人事業主への電子請求書義務化、飲食店が便乗で一斉値上げ (16日)

 6月以降、ホーチミン市やハノイ市にある多くの飲食店で、ブン、フォー、バインミーなどの価格が一斉に引き上げられている。店主らは値上げの主な理由として、「納税義務の発生」を挙げている。  店主らは、...

ベトコムバンク、東南アジアの有力ブランドトップ30に初選出 (16日)

 英市場調査会社カンター(Kantar)が発表した「東南アジアのブランド価値トップ30ランキング」2024年版で、ベトコムバンク[VCB](Vietcombank)がベトナム企業として唯一ランクインを果

畜産大手CPベトナムの「病畜の肉」流通疑惑、違反の3店舗に罰金 (16日)

 タイ系畜産大手CPベトナム(CP Viet Nam)が病気の豚や鶏の肉を販売していたとソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)上で告発されたことを受け、南部メコンデルタ地方ソクチャン省農業環境局は11日、検査...

ベトナム航空、スカンジナビア航空と提携 北欧路線の接続強化 (16日)

 全日空ANAが出資するベトナムのフラッグキャリアであるベトナム航空[HVN](Vietnam Airlines)は13日、スカンジナビア航空との間で、ベトナムと北欧(デンマーク、ノルウェー、スウェ

ダナン:半導体研究開発ラボ建設を承認、投資総額98億円 (16日)

 南中部沿岸地方ダナン市人民委員会は、半導体向け先端パッケージング技術の研究開発(R&D)を目的とした実験施設プロジェクトへの投資方針を承認した。  プロジェクトの投資主は、半導体や人工知能(AI)分野の...

©VIETJO ベトナムニュース 2002-2025 All Rights Reserved