ベトナムニュース総合情報サイトVIETJO [ベトジョー]
 ようこそ ゲスト様 

クア博士と共に生きた日本人女性 中村信子さん

2007/04/01 08:41 JST配信

 ベトナムの農学研究者として第一人者だった故ルオン・ディン・クア博士の妻、中村信子さんは今年86歳になる。現在はホーチミン市で子どもや孫たちと共に暮らしている。彼女は55年前、夫と共にベトナムに渡って以来、ベトナムを第2の故郷と思い、夫亡き後もここで暮らすことを望んだ。先日北部のハノイ市ラオカイ省まで旅をした際、農業大学での第一回ルオン・ディン・クア賞授賞式に参列した。以下は中村信子さんへのインタビュー。

―故ルオン・ディン・クア博士とはどのようにして出会ったのですか。

 第2次世界大戦中、私は九州大学の学生でした。夫は東南アジアからの留学生として農学部で勉強していて、その時に私たちは出会いました。夫は大学卒業後、さらに細胞遺伝学を研究するために京都大学に入りました。1945年に終戦を迎えると、私たちは家族の同意を得て結婚し、やがて2人の息子に恵まれました。

―日本で結婚し暮らしていても、クア博士は常にベトナムへ帰って国に貢献することを願っていたとお聞きしています。ベトナムは戦争の影響で不安定な状況にもかかわらず、それでもあなたは夫に従って共にベトナムへ渡ったのですね。

 1945年にベトナム民主共和国が誕生した時には、夫は大変喜んでいました。夫はバックホー(ホー・チ・ミン国家主席)をとても尊敬していて、いつもベトナムへ帰って国のために役立ちたいと願っていました。1952年に夫が農学博士号を取得した時、私の家族や友人たちはヨーロッパかアメリカに渡るよう勧めました。その方が研究を続けやすいというのです。でも夫はベトナムへ帰ることを選びました。

 さまざまな資料や実験データを携えてベトナム北部に入るため、私たちは中国経由で帰ることにしました。しかし状況が悪く、私たち家族はサイゴンに戻ることを余儀なくされました。当時ベトナムはフランスの植民地で、精神的にも物質的にもかなりの不自由を強いられました。夫の兄弟たちはとても良くしてくれましたが、そこでの生活に溶け込むのにはずいぶんと時間がかかりました。

―クア博士がハノイで働いている間、農学の知識を持つあなたはずいぶんと彼を助けたそうですね。

 1954年になると革命軍から連絡があり、私たち家族は北部に移住することになりました。私はそのころ、まだベトナム語が話せませんでしたが、夫が取り組んでいた稲の交配の仕事を手伝うことになりました。注意力と忍耐力を要する仕事で、夫は他の人にこの仕事を任せられないと話していました。

―あなたは、ベトナムの声放送局の日本語翻訳員兼アナウンサーを務めていたそうですね。

 自分に合っていそうだったし、これならできそうだと思って引き受けました。一番の思い出は、1975年4月30日にベトナム南部解放のニュースを読み上げた時のことです。人々の興奮した様子や熱狂した雰囲気を、今も鮮明に覚えています。日本とベトナムの両方で苦しい戦争を体験していたので、戦争が完全に終結した時の喜びは今でも忘れることができません。

―ハノイに住んでいる間に、多くの党指導者や国家幹部を自宅に迎えたのではありませんか。

 私たち家族はハノイ市のキムリエン集合住宅地区に住んでいました。家を訪れる指導者たちの中でも最も夫を支援してくれ、夫が兄のように慕っていたのは、ファム・ヴァン・ドン氏(1955年から87年まで首相)とファム・フン氏(1960年から64年まで副首相)です。ファム・ヴァン・ドン氏はわが家を訪れ、一緒に写真を撮ったりもしました。ファム・フン氏は何度も食事に招いてくださいました。夫はさまざまな場所で植樹を行っていましたから、訪れるお客様に採れた果物を差し上げることもありました。

(次週に続く)

[2007年3月8日 Thanh Nien紙].  © Viet-jo.com 2002-2025 All Rights Reserved. 
※VIETJOベトナムニュースは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。 免責事項
新着ニュース一覧
ベトナム、25年1~6月期の電動バイク販売台数で世界3位 (13日)

 バイク市場調査会社のモーターサイクルズデータ(Motorcycles Data)によると、ベトナムにおける2025年1~6月期の電動バイク販売台数は20万9000台で、前年同期比+99.2%増となり、世界3位の市場規模となった。 ...

ベトナム航空、韓国企業と航空・観光・物流で提携 (13日)

 ベトナム航空[HVN](Vietnam Airlines)は、韓国のソウルで開催されたベトナム・韓国経済フォーラムで、同国を公式訪問中のトー・ラム書記長の立ち会いのもと、韓国企業との間で4件の

ビンファスト、インドHDFC銀行とEV購入促進で提携 (13日)

 地場系コングロマリット(複合企業)ビングループ[VIC](Vingroup)の子会社で、米ナスダック証券取引所(NASDAQ)上場の電気自動車(EV)メーカーであるビンファストオート(VinFast Auto=

父親から受け継いでこの道40年、「時」を修理する男性 (10日)

 ホーチミン市在住のグエン・クオック・フンさん(男性)は、40年以上にわたって時計の修理を生業にし、家族を養い、3人の息子を大学に通わせ、立派に育て上げた。  フンさんの店の名前が「グエン」(※名字のグ...

ベトナムモーターショー、25年は開催見送り 26年に全面刷新へ (13日)

 ホーチミン市タンミー街区(旧7区)のサイゴンエキシビション&コンベンションセンター(SECC:799 Nguyen Van Linh, phuong Tan My, TP. Ho Chi Minh)で毎年10月に開催されている「ベトナムモーターショー(Vietna...

ラム書記長、韓国・延世大学で講演 名誉博士号授与 (13日)

 国賓として韓国を公式訪問中のトー・ラム書記長は11日、延世大学校を訪れ、「平和、繁栄、協力、発展のためのベトナムと韓国の包括的・戦略的パートナーシップの推進と強化」をテーマに講演した。  ラム書...

三工社、ベトナム鉄道総公社での実証実験開始 安全性向上に貢献 (13日)

 鉄道信号や鉄道車両、交通信号などのメーカーである株式会社三工社(東京都渋谷区)は、2024年11月にベトナム鉄道総公社(Vietnam Railways=VNR)との間で、踏切警報灯全方位形、踏切大口径しゃ断桿、土砂崩壊検知...

タンソンニャット空港の全国際線、ロンタイン空港に移管へ (13日)

 ベトナム空港社[ACV](Airports Corporation Of Vietnam)は、東南部地方ドンナイ省で建設中のロンタイン国際空港の第1期が2026年に稼働を開始すれば、ホーチミン市タンソンニャット

ベトラベル航空、タンソンニャット空港発着の全国内線をT3に移管 (13日)

 ベトラベルホールディングス(Vietravel Holdings)傘下のベトラベル・エアラインズ(Vietravel Airlines)は、現地時間8月21日午前0時から、ホーチミン市タンソンニャット国際空港を発着するすべての国内線を第3旅...

国家サイバーセキュリティ協会、インフルエンサーを格付けへ (13日)

 公安省傘下の国家サイバーセキュリティ協会は、「インフルエンサー信用認証」プログラムを開始し、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などで活動するキーオピニオンリーダー(Key Opinion Leader=KOL...

7月の新設外資企業2件、前年同月比▲99%減 (13日)

 各省・市の計画投資局のデータによると、2025年7月に全国で新規設立された外資企業および支店、営業所、駐在員事務所の数は前月比▲99.4%減、前年同月比▲99.3%減の2件で、うち会社が1件、営業所が1件だった。 ...

ハノイ:建国80周年記念事業ウェブサイト「ベトナムの誇り」開設 (13日)

 ハノイ市人民委員会は8日、8月革命記念日80周年(1945年8月19日~2025年8月19日)および建国記念日80周年(1945年9月2日~2025年9月2日)の記念事業の一環として、ウェブサイト<https://a80.hanoi.gov.vn>とモ

マーキュリアHDのタイ法人、地場S&Cと資本業務提携 (13日)

 株式会社マーキュリアホールディングス(東京都千代田区)のグループ会社であるマーキュリアタイランド(Mercuria (Thailand)=MTC)は1日、合併・買収(M&A)アドバイザリーや経営コンサルティング、貿易推進サポー...

環境配慮型素材のTBM、FPT ISと企業の脱炭素経営支援で協業 (13日)

 環境配慮型の素材開発および製品の製造・販売を手掛ける株式会社TBM(東京都千代田区)は7月23日、ベトナムIT最大手FPT情報通信[FPT](FPT Corporation)傘下のFPT情報システム(FPT IS)

マネジメントオフィスTAG、ベトナム駐在員事務所を設立 (13日)

 税理士法人TAG経営(愛知県名古屋市)のグループ会社である有限会社マネジメントオフィスTAG(愛知県名古屋市)は、ベトナム駐在員事務所を5月26日付けでホーチミン市に設立した。  税理士法人TAG経営は、日本...

©VIETJO ベトナムニュース 2002-2025 All Rights Reserved