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事故で両腕失った青年、足で絵を描き見つけた生きる道

2019/11/03 05:02 JST配信
(C) vnexpress
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 そんなタイさんに、母親のファットさんは「神様はあなたから何かを奪ったけれど、他の何かを授けてくださるから。ゆっくり、少しずつでいいのよ」と慰めた。ファットさんはタイさんを励ますためにこう言ったのだが、実はファットさん自身はそんな風には思えなかった。

 毎日4時間の練習を繰り返して、足の2本の指でペンをコントロールできるようになり、2週間後についに自分の名前を書くことができた。

 字を書くことができてすぐに、タイさんは足で絵を描くことを考えついた。絵を描くというのは、長いこと忘れていたタイさんの才能でもあった。そしてこれは「自分で喜びを生み出すために何かやる」という単純な欲求だった。タイさんは、もしここで立ち止まったら絶望に飲み込まれてしまうと恐れていた。

 一番初めに小さな葉っぱを描いた。まだ描き切らないうちにペンは落ち、何度頑張っても掴めない。その時、タイさんは2日間休まなければならなかった。痙攣を起こし、痛みで眠れなかったのだ。

 タイさんは、焦れば焦るほど足の指が硬直しコントロールできなくなることを思い知った。数日後、脚の筋肉は柔らかく、またペンは柔軟に動かせるよう、一生懸命に練習をした。

 最初に描いた肖像画は3日で仕上がった。モデルと比べると70%くらいの完成度。母親のファットさんはその絵を手にして、「本当にそっくりよ!」と言った。タイさんも「まさかこんなにもすぐに絵が描けるようになるなんて」と驚いた。

 タイさんが自分のフェイスブック(Facebook)ページに描いた絵をアップすると、何人かの友人から肖像画を描いて欲しいと頼まれた。そして数日後、1人の友人が絵の報酬として20万VND(約960円)をくれた。事故から6か月後のことだった。

 「心が燃えるようでした。それが、自分の足で初めて稼いだお金だったんです。自分はまだ役に立てる人間なのだとわかり、母も涙を流して喜んでいました」とタイさんは振り返る。

 絵画を専門に学んだことがなく、感覚だけで描いていたタイさんは、ある客から家族14人の絵を依頼され、レイアウトがうまくいかず途方に暮れた。実に100枚以上も描いては捨てる、を繰り返した。

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