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事故で両腕失った青年、足で絵を描き見つけた生きる道

2019/11/03 03:02 ICT配信

 別の客は、タイさんが送った肖像画が気に入らず、送り返してきた。2枚目もまた満足できないと送り返され、タイさんはどうしてかもわからず不安になった。他になすすべもなく、できる限りの力を出し切って、3枚目は目から手のしわまで細かく、何時間もかけて慎重に描いた。

 客はコメントこそしなかったものの、ようやく満足してその絵を受け取った。そしてタイさんは、送り返された2枚の絵には魂がこもっていなかったと気づいた。お金をもらって描く絵と、友人にプレゼントするために遊びで描く絵とは全く異なるものだということがわかったのだ。

 「障害はありますが、お客さんに同情で商品を買ってもらうためにそれを盾にすることはしません。自分が生み出すものは、品質と価値で勝負しなければなりませんから」。それ以来、タイさんはゆっくりと線を描き、濃淡を慎重に表現して、絵に精神を吹き込んでいった。特に目は肖像画の魂だからと重きを置き、最も時間をかけて描いた。

 タイさんは3か月余りにわたり水彩画の練習をしたこともあるが、うまくいかなかった。ある時は、突然筆を握っていられなくなり、落ちた筆で絵具が飛び散り、完成間近だった絵が台無しになってしまった。以来、タイさんは、鉛筆だけで描くことに決めた。

 2019年6月、タイさんは仕事のために故郷の東南部地方タイニン省からホーチミン市に移り住み、実家から離れて生活の全てを自分でしなければならなくなった。それでも、鉛筆削りはまだ自分1人でできないため、同じアトリエの友人に頼むのだった。

 これまでにタイさんが描いた100枚以上の絵が国内外の客の手元に渡った。現在は毎月10枚余りの絵を描いており、その稼ぎで生活を賄えるくらいになった。

 もし事故に遭っていなかったら、タイさんは変わらず工事現場の作業員として働いていただろう。そして、自分が絵を描いてお金を稼ぐ画家になるとは考えもしなかったはずだ。

 タイさんは、「皆、足で描いた絵のほうが手で描くよりもうまいと褒めてくれます。多くの人が私のことを画家と呼びますが、もし過去に戻れるとしても、両手と引き換えに画家になろうなんて絶対に思いませんよ」と苦笑した。

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