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四肢を切断した女性、家族と歩む新たな人生

2020/06/14 05:57 JST配信
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 タイさんが手術の書類に署名するために勇気を振り絞ろうとしていたときのことだった。いつから目を覚ましていたのか、タムさんはタイさんを呼んで、「あなた、私の手足を切り落とす書類にもう署名したの?」とたずねた。タイさんは「まだだよ、他に何か方法がないか探しているんだ」と答えた。

 タムさんは落ち着いた声で言った。「もうどうしようもないわ。書類に署名して。もし署名しなければ、子供の顔も見られなくなる」。

 手術室に入ったタムさんの頭の中には、たった2週間しか抱っこできなかった幼い息子の姿だけが浮かんでいた。「ケン」。麻酔で意識を失うまで、タムさんは息子の名前を呼び続けた。

 心の準備はできていたが、手術が終わって目が覚めたとき、タムさんはやはりショックを受けた。タムさんの脚は膝上から切断されていた。右腕は肘上から、左腕は肘が少し残るくらいのところからなくなっていた。

 「見ると脚が短くなっていて、落ち込み、深い穴の中に転げ落ちた悪夢を見ているような気持ちでした」とタムさん。当時、タイさんは時おりタムさんが空しい思いで涙を流している姿を目にすることがあった。

 そんなとき、タイさんは病室と自宅をビデオ通話でつなぎ、タムさんに息子の姿を見せるしか術がなかった。タムさんが息子に微笑むと、タイさんはそばで「がんばらないとね。息子はまだ小さいんだ、お母さんを失わせちゃいけないよ」とささやいた。

 2019年1月末、タムさんは退院した。このとき息子は生後2か月。帰宅したばかりのころは、疲労困憊した。病院では24時間誰かが世話をしてくれたが、自宅では何かを食べたり飲んだり、トイレに行ったりしたければ、家族に頼らなければならなかったからだ。

 タムさんは自己憐憫に駆られ、「自分は役立たずだ」と感じた。1か所に寝転んでいることしかできず、日に日に落ち込み、夜な夜な涙を流した。

 妻を自宅に連れて帰って数日経って、タイさんは借金を返済するために仕事に戻らなければならなかった。タイさんは毎朝早く起きて妻に朝食を食べさせ、妻の気が紛れるよう姉か祖母の家に連れて行った。

 タイさんの仕事場は自宅から60km離れたところにあり、携帯電話用アクセサリーの事業もまだ軌道に乗っていなかったため、それと別に広告や不動産などの仕事もしていた。

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