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この道30年、人々の心を文字に起こす路上のタイプライター職人

2023/07/09 10:20 JST配信
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 トゥーさんの幼少期は、祖父と母親のタイピング店に鳴り響く、カタカタというタイプライターの音とともにあった。当時、店には毎日たくさんの依頼人がきて、母親だけでは手が足りないときはトゥーさんも手伝った。時折キーを打つ練習をし、仕事に慣れていった。

 依頼人のそれぞれの物語が母親の手で機械によって文字に起こされ、すらすらと白い紙に印字されていく。その様子はいつからか、トゥーさんの好奇心をかき立てるようになった。

 1988年、トゥーさんは母親から仕事を引き継いだ。トゥーさんは最初、書類を見た人に依頼人の言わんとすることを理解してもらうにはどうすればいいのだろうかと苦しんだ。そして、トゥーさんが書いた最初の書類が依頼人のもとに渡り、当局に提出された。

 トゥーさんの記憶によれば、1980~1990年ごろにタイプライターの文字起こしの仕事が発展し、当時は収入も安定していた。書類の作成だけでなく、物書きの依頼で詩や短編小説の文字起こしをすることもあった。時には、海外に住んでいる親戚宛ての手紙を頼まれることもあった。

 今や情報技術が発展し、ニャチャン市にもパソコンやプリンターを扱う店が次々と増えたが、それでも多くの人々がトゥーさんのもとを訪れている。

 依頼人によると、印刷屋に文字起こしを頼んでも、言葉は無味乾燥で、心の内をうまく表すことができないのだという。それに、料金もずっと高い。一方、トゥーさんは依頼人の話に耳を傾け、依頼人の状況を詳しく伝えてくれるため、信頼が厚いのだ。

 生活は決して楽ではなく、日に日に苦しくなっているが、トゥーさんはタイプライターの仕事を何とか続け、一家の大黒柱である夫を支えている。暑い日も同じところに座って依頼人の話に耳を傾けるトゥーさん。トゥーさんの仕事場の前にはいつも、誰でも利用できる「無料のお茶」の大きなボトルが置かれている。

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