ベトナムニュース総合情報サイトVIETJO [ベトジョー]
 ようこそ ゲスト様 

ベトナムの人材事情(7):ベトナム人従業員の定着率を向上させるには?

2016/05/07 06:00 JST配信

 こんにちは、G.A.コンサルタンツの関です。前回の続編として今回は、リテンション(従業員の定着率向上)についてもう少しお話をしたいと思います。

 具体的事例についてお話をする前に、まず1つの考え方をご紹介します。色々なリテンションについての方法論がありますが、この考えに立ち返ると整理がしやすくなります。

 「Total Rewards」と呼ばれるこのコンセプトは、そもそもが金銭報酬だけでなく、非金銭報酬も含んだトータルな報酬によって従業員のモチベーションは決まるという考えに基づいています。

 行き過ぎた成果主義に対してのアンチテーゼとして提唱され、人はお金だけによって動機付けされるわけではなく、もっと他者からの承認や仕事そのもののやりがいといった目に見える報酬以外のところにも目を配るべきだと、その必要性を説いています。

非金銭報酬のABCDE

 Total Rewardsの非金銭報酬の部分についての考え方は、頭文字を取って非金銭報酬のABCDEと呼ばれています。

 以下順を追って紹介していきますと、

Acknowledgement (感謝と認知)」
→ 成績優秀者、高い貢献をした社員への感謝状などのフィードバック

Balance of work and life (仕事とプライベートの両立)」
→ 生活の質を高めるためのカウンセリング、育児との両立のサポート

Culture (自由闊達な組織風土)」
→ 提案がしやすい風土や、従業員間での良好なコミュニケーション奨励など

Development (成長の機会)」
→ 学習の機会、職務の習熟度を高める機会の提供、キャリア開発

Environment (就業環境)」
→ 場所、時間、オフィス環境、仕事の内容

 人材を獲得する段階では金銭報酬に焦点がいきやすいのですが、採用した人材を定着させる上でこの非金銭報酬の考え方は役立ちます。

 むしろ金銭報酬だけで人材をキープすることは難しくなっています。特にベトナムにおいては家族主義の影響が強いことから、随所に「家族」がテーマとして登場して参ります。

 このTotal Rewardsに関連させて、ではどういった施策が効果的なのか、いくつか挙げていきたいと思います。

ベトナム人従業員の定着率向上施策

【社員旅行】

 日本人と異なり、組織に対するロイヤリティはベトナム人の中ではあまり強く意識されません。それよりも、一緒に働く仲間への帰属意識が大きく影響してきます。中でも変わっているのが、社員旅行に従業員の家族を招待する会社が多いことです。何故なのでしょう?

 筆者の経験で、従業員にこう言われたことがあります。「普段夫婦同士どういった会社で働いているのか全く見えません。会社や仕事への理解を示してくれない、時には離職を促してくるケースすらあります。でも社員旅行を通じて、社員旅行に呼ばれた配偶者が『こういう会社で働いているのか、いい会社だね』と言ってくれるようになるのです」。

【MVP制度】

 ファストフードのお店で、壁に「Staff of the Month」と1人の氏名が貼り出されているのを見たことはありませんか?また、IT企業でも月間MVPが表彰されているのをよく見かけます。

 特に外部との交渉や営業で売上を上げるといったような業務でなく、業務の評価が定性面に寄っている職種については、意識的に会社側から肯定的なメッセージを伝えることによって良い行動へのドライブがかかりやすくなります。

【時短・在宅ワーク制度の活用】

 産休後の時短については労働法でも規定されていますが、核家族化が進行しつつあるベトナムでは1年間の時短のみでは十分と言えません。2児、3児(最近は3児はベトナムで少なくなりつつありますが)の母親となりますと、率直な感想では2時間、3時間の時短が必要なのではないでしょうか?

 既に皆様がご存知の通り、多くの会社では女性スタッフが戦力の中心です。硬直的な人事制度で運用するか、それとも柔軟に働きやすい環境を作り、優秀な女性スタッフを上手く活用するかがポイントになってきます。一部の会社や職種では柔軟な働き方が認められ始めています。

【褒める】

 最後に、当たり前のようでいてなかなか実践が難しいのが、この単純に「褒める」という行為です。誰しも大半は良かれと思って業務に取り組んでいます。ただ、時にその方向性や考え方が間違っている時があります。

 日本人は減点主義に慣れ親しんでいるので、間違った場合に指摘をして、それを修正・改善することで次に繋げていきます。ベトナムではどうでしょう?逆にモチベーションを下げてしまうことの方が多いでしょう。

 単純に「いいね!」と伝えるだけで十分な効果は見込めます。迅速に対応してくれたスタッフに対して「よく短時間でやってくれたね、有難う!」と、ミスなく業務を完了させた人には「グッドジョブ!次もこの調子で」と声を掛けるなど、本当に発する言葉は単純で問題ないと思います。要は面倒くさがらずに言うか言わないかだけです。

 とかく「ベトナム人は給与次第でホイホイ転職する」と揶揄されることが多いのですが、意外とこの非金銭報酬の部分を大事にしているベトナム人の方が多いように見受けられます。ウェットな国民性の持ち主だと思います。今回述べた例は一部にしか過ぎませんが、皆様の参考となりましたら幸いです。

著者紹介
関 岳彦 (せき たけひこ)

G.A.Consultants Vietnam 代表
大学卒業後G.A.コンサルタンツへ入社。
2005年よりベトナム人の人材紹介を行うVieclamBank(ベクラムバンク)事業の立ち上げでベトナムへ駐在を開始。その後日本人のベトナム就職のためのブランドR-Vietnamを展開。
日本人求職者のキャリアコンサルティングを行う一方、ベトナム国内の日系企業のうち、累計500社超に及ぶ採用をサポート。現在はホーチミンを基点にハノイ、ジャカルタ、ヤンゴンのオフィス間を行き来する。
◇ベトナム人紹介サイト:vieclambank.com
◇ベトナムで働きたい日本人のためのサイト:r-vietnam.com


ベトナム人材事情
その他の記事はこちら>
[2015年5月7日 ベトジョーコラム A].  © Viet-jo.com 2002-2025 All Rights Reserved. 
※VIETJOベトナムニュースは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。 免責事項
新着ニュース一覧
ホーチミン:「オンチェーン経済連盟」設立、国際金融ハブ目指す (27日)

 ホーチミン市で25日に開催された「CEO 500 - Tea Connect」の対話セッションで、ファム・ミン・チン首相や同市共産党委員会のチャン・ルウ・クアン書記、世界経済フォーラム(WEF)の責任者などの立ち会いのもと...

不二家と丸紅、タイニン省で焼菓子工場竣工 カントリーマアム生産 (27日)

 株式会社不二家(東京都文京区)と丸紅株式会社(東京都千代田区)の合弁会社である不二家ベトナム(FUJIYA VIETNAM、ホーチミン市)は、南部地方タイニン省(旧ロンアン省)のフウタイン工業団地で焼菓子製造工場を竣...

航空局、空港網の拡大を提案 50年までに36か所体制へ (27日)

 ベトナム民間航空局(CAAV)は、2050年までを視野に入れた2021~2030年の全国空港システム開発マスタープランの調整案を建設省に提出した。  提案によると、全国の空港数を2030年までに33か所、2050年までに3...

ホーチミンの市場とともに生きる:バンコー市場 (23日)

 ホーチミン市のめまぐるしく変わりゆく街並みの中で、バンコー市場(cho Ban Co)は、記憶の断片のようにひっそりと存在している。商人たちは日々、市場で商売を続けている。まるで、1束の野菜が、1kgの玉ネギが...

ラムドン省:リエンクオン空港、改修工事で26年3月から一時閉鎖 (27日)

 南中部地方ラムドン省のリエンクオン国際空港は、2026年3月4日から一時閉鎖し、滑走路および誘導路、関連設備の改修・拡張工事を実施する予定だ。  工期は4か月超で、早ければ9月2日の建国記念日前の再開を...

世界長者番付、ビンG会長が初のトップ100入り 資産225億USD (27日)

 米経済誌フォーブス(Forbes)のリアルタイム世界長者番付によると、地場系コングロマリット(複合企業)ビングループ[VIC](Vingroup)の創業者 兼 会長であるファム・ニャット・ブオン

国会、司法協力・引き渡しに関する法律4本を可決 (27日)

 国会は26日、◇引き渡し法、◇受刑者移送法、◇民事司法共助法、◇刑事司法共助法の4本の法律を賛成多数で可決した。  今回の4本の法律の可決により、ベトナムは国際司法協力体制のさらなる整備が進み、国際犯...

ベトテル開発の海事訓練シミュレーター、国際的な最高位認証を取得 (27日)

 国防省傘下のベトナム軍隊工業通信グループ(ベトテル=Viettel)の子会社であるベトテルハイテク産業総公社(Viettel High Technology Industries=VHT)が開発した海事訓練シミュレーションシステムが、ノルウェ...

ホーチミン:フランスから「里帰り」の美術作品42点を展示 (27日)

 ホーチミン市美術博物館は21日、ベトナム東洋研究所の設立に関する故ホー・チ・ミン主席の勅令第65号/SLの署名80周年と11月23日の「ベトナム文化遺産の日」20周年を記念して、特別展「帰還(Tro ve)」を開幕した...

パス子会社のRMDC、地場ホアラック幹細胞と業務提携へ (27日)

 コスメ事業やビューティ&ウェルネス事業、再生医療関連事業などを手掛けるパス株式会社(東京都渋谷区)の連結子会社である株式会社RMDC(東京都渋谷区)は25日、幹細胞分野のパイオニア企業である地場ホアラック...

アピリッツ、地場ブンブの完全子会社化を完了 (27日)

 各種ウェブサービスの企画・運営やコンサルティング・アクセス解析などを手掛ける株式会社アピリッツ(東京都渋谷区)は25日、ソフトウェア開発などを行う地場ブンブ(BUNBU、ハノイ市)の株式を取得し、完全子会社...

第3回チョロン・フードストーリー・フェス、12月5日から開催 (27日)

 ホーチミン市アンドン街区(旧5区)文化スポーツセンター(105 Tran Hung Dao, phuong An Dong, TP. Ho Chi Minh)で12月5日(金)から7日(日)にかけて、「第3回チョロン・フードストーリー・フェスティバル」が開催...

ハノイ:26年から低排出ゾーン導入、時間帯でガソリンバイク禁止 (26日)

 ハノイ市人民委員会は、同市人民評議会に対し、低排出ゾーンの設置について定める決議案を提出した。  低排出ゾーンの設定基準として、◇都市計画上の厳重保護区域または排出制限区域に該当すること、◇渋滞...

台風15号(コト)発生、ベトナム中部方面に接近 (26日)

 日本の気象庁が発表したデータによると、ベトナム現地時間25日19時にフィリピンのスル海で台風15号(アジア名:コト、日本では台風27号)が発生した。  コトは、26日13時の時点で南シナ海に位置しており、1時...

ハノイ工業大学を格上げ、「構成大学と学部を傘下に置く大学」に (26日)

 レ・タイン・ロン副首相はこのほど、ハノイ工業大学(HaUI、ハノイ市)を「構成大学と学部を傘下に置く大学」に格上げする首相決定第2536号/QD-TTgに署名した。  今回の格上げにより、ハノイ工業大学は学部を...

©VIETJO ベトナムニュース 2002-2025 All Rights Reserved