ベトナムニュース総合情報サイトVIETJO [ベトジョー]
 ようこそ ゲスト様 

【第5回】演じること・観せること、そして再現

2019/02/27 09:00 JST配信

おおぞら日本人幼稚園には特設ステージがあります。幼稚園開園当時は、タイルの床とトタン屋根でデッドスペースとなっていました。そこで、床をウッドデッキに、屋根をアジアン調に作り直し、子どもたちのステージに改造したのです。子ども達が普段生活している場でいつものように発表会を行いたいというのが私の願いでもありました。

発表会では、保護者の方は園庭から観賞いただきます。今年度は園児数が増え、1度に全員を見ていただくには狭すぎることもあり、プロの舞台俳優や歌舞伎役者のように、2日公演とさせていただきました。保護者の皆様には、我が子だけの演技を観るだけでなく、2歳児の年幼組から5歳児の年長組を通して観てもらい、子どもたちの成長過程を感じてほしい、というねらいがありました。

さて、1月26日・27日の両日に渡り、幼稚園の「Performance Day」(パフォーマンス・デー:おおぞら幼稚園では発表会ではなく、Performance Dayと呼んでいます)を行いました。保育者は、発表演目について、子ども達にどのストーリーが合うのかを探ります。毎日繰り返す絵本の読み聞かせの中から子ども達に合う題材を見つけていきました。

2歳児の年幼組は、入園当初から楽しく繰り返し歌ってきた歌をそのままご披露。そして、好きなお話をいつもの生活の延長で自分たちが演じました。ところが、舞台に出た途端、「ねむい…」と言って寝転んでしまったり、「やるぞ!」と登場したものの、たくさんの観客にびっくりしてプンプン怒ってしまったり…。発表よりもその時の気分が優先してしまうこともあった2歳児でした。

3歳児は楽器の演奏と劇でした。保育者はヤラセにならないようにと細心の注意を払って当日に備えていました。年少組の保護者は2日目に観覧です。本番の日、子ども達に自らの躍動感を持って、発表を迎えて欲しいという保育者の願いは見事叶いました。年少組の子ども達が興味深かった事は、舞台に登場して役になりきるよりも、自分のパパとママを見つけることが重要だったことです。そちらに「手を振る」ことが最初のパフォーマンスとなった年少組でした。

年中組の4歳児は、演じる意識と見せる意識との狭間にいます。セリフは「はずかしい」と言って、モゴモゴ状態で終わってしまう子どもたちも中にはいます。保育者の腕の見せどころです。意識を持ってやり遂げた子ども達は、自信を持ってその後さらに成長した姿が見られます。

年長5歳児は、保育者と息がぴったり合う時でもあり、毎日劇を一緒に作り上げていきました。自分の役ではない別の役のセリフも覚え、みんなで歌う歌は何回も繰り返し口ずさみ、ストーリーが完全に身体に染み付いていました。

翌週、それぞれ劇で使った小道具を共通の場に出しておきました。驚いたのは、すべての子どもたちが、自分たちがやっていない別のクラスの劇の再現をし始めたのです。当日観たことで、自分の中で一番印象に残っている部分を、再現しているのです。年齢に関係なく、共通したイメージを持って、同じ空間で演じていました。ここが子どもたちの面白さだと思います。

よくあるケースとして、物語は発表会のためのものを保育者がチョイスし、発表会当日に向けて練習を繰り返し、本番を迎えるということが多くあります。その日になるまで、保育者も子どもも繰り返し練習しているため、本番が終わると、「もうやりたくないモード」になります。もちろん保育計画も翌週からは別のことを計画するところが多いでしょう。しかし子ども達の生活とは、毎日の繰り返しです。その中でいかに興味関心を持って周りの出来事に関わることができるか、これが子どもの心の成長に欠かせない要素なのです。子どもの身体にストーリーが染み付き、興味を持って観ていただけで自然と身体が動き出すことが、まさにそれなのです。「練習」「本番」という言葉で簡単に区切ることのできない子どもの表現感覚を、私たちの幼稚園では大切にしていきたいと考えています。

著者紹介
多々内三恵子
おおぞら日本人幼稚園理事長・園長。

タオディエン日本人幼稚園園長。

静岡大学教育学部附属幼稚園・青山学院幼稚園教諭を経てホーチミンで日系幼稚園を開園。

日本の保育を真摯に、かつユニークに展開中。

子どもの世界の面白さを語ったら止まらない。

>> おおぞら日本人幼稚園ウェブサイト

>> タオディエン日本人幼稚園フェイスブックページ
子育て奮闘中のパパママにエール!
その他の記事はこちら>
© Viet-jo.com 2002-2025 All Rights Reserved. 
※VIETJOベトナムニュースは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。 免責事項
新着ニュース一覧
THACO、クアンナム省の自動車機械工業団地を拡張へ (14:32)

 南中部沿岸地方クアンナム省人民委員会はこのほど、同省のチューライ・チュオンハイ拡張自動車機械工業団地のインフラ整備案件に関する投資方針を承認した。  投資主は、地場系コングロマリット(複合企業)...

タンソンニャット国際空港、開業間もない新ターミナルで雨漏り (14:15)

 ホーチミン市タンソンニャット国際空港の第3旅客ターミナル(T3)で7日、雨漏りが発生した。投資総額11兆VND(約610億円)をかけて建設され、開業から1か月も経っていない新ターミナルでの出来事だった。  7日...

マングデン空港とバンフォン空港を全国空港開発計画に追加へ (14:14)

 チャン・ホン・ハー副首相はこのほど、南中部高原地方コントゥム省で建設が計画されているマングデン空港と、南中部沿岸地方カインホア省のバンフォン経済区で建設が計画されているバンフォン空港を、「2050年...

世界のベトナム人街を訪ねて【ロンドン編】 (4日)

(※本記事はVIETJOベトナムニュースのオリジナル記事です。)  ロンドン:歌謡曲でムードたっぷり、街角カフェでベトナムコーヒーを1杯  国外に住むベトナム人、いわゆる越僑は、2024年末時点で世界130

ベトナム航空、アディエンと決済パートナーシップを拡大 (13:35)

 ベトナム航空[HVN](Vietnam Airlines)はこのほど、オランダに本社を置き、決済プラットフォームを提供するアディエン(Adyen)との決済パートナーシップを拡大した。

ジエン商工相が主要企業と会合、米国との購買合意実施を加速へ (6:41)

 相互関税への対応の一環として、米国側との交渉を担当するベトナム政府交渉団の団長を務めるグエン・ホン・ジエン商工相は7日、企業と会合を行い、米国との合意の実施促進について協議した。  会合に招へい...

ベトナム航空、インド・パキスタン衝突で欧州路線の飛行ルート変更 (6:03)

 インドとパキスタンの衝突を受け、ベトナム航空[HVN](Vietnam Airlines)は、ベトナムと欧州を結ぶフライトの運行計画と飛行ルートの変更を発表した。  7日には、以

ホイアン:海岸で発見の古い木造船、数百年前に建造か (5:17)

 南中部沿岸地方クアンナム省ホイアン市の海岸で2023年12月に発見された古い木造船は、数百年前に建造された古代船とみられている。同省文化スポーツ観光局は7日、木造船発見現場の監視と保護を関係機関に要請し...

地場企業、レイヤー1ブロックチェーンネットワークを開発へ (5:04)

 地場ワンマトリックス(1Matrix)は6日、ベトナム人が設計・運営する国産のレイヤー1ブロックチェーンネットワークを開発・運営する計画を発表した。  同社は、企業や官民向けに包括的なブロックチェーンソリ...

村田製作所の生産子会社、ドンナイ省で新生産棟を着工 (4:07)

 株式会社村田製作所(京都府長岡京市)の生産子会社であるムラタ・マニュファクチャリング・ベトナム・ホーチミンプラント(Murata Manufacturing Vietnam Co., Ltd. Ho Chi Minh Plant)は、新生産棟の建設を開始...

アイデム、地場リキベトナムと業務提携 外国人材への就職支援強化 (3:56)

 総合人材情報サービスの株式会社アイデム(東京都新宿区)が展開するアイデムグローバルは4月22日、ベトナム最大手の日本語学校を運営するリキベトナム教育・貿易(Riki Viet Nam Education and Trading、ハノイ市...

ベトナムロジスティクス国際展示会、ホーチミンで7月31日から (2:35)

 ホーチミン市7区のサイゴンエキシビション&コンベンションセンター(SECC:799 Nguyen Van Linh, quan 7, TP. Ho Chi Minh)で、7月31日(木)から8月2日(土)まで、「ベトナムロジスティクス国際展示会2025(VILOG ...

内務省、特定分野の外国人専門家の労働許可証免除を提案 (8日)

 内務省は、外国人労働者のベトナムでの就労に関する政令第152号/2020/ND-CPおよび政令第70号/2023/ND-CPを改正・補足する政令案を策定しており、この中で、特定事業分野の外国人専門家について規定を緩和するこ...

5月施行の新規定、山岳地帯や離島の園児・生徒支援措置など (8日)

 5月に施行される新規定3本をまとめて紹介する。 1.少数民族居住地域や山岳地帯、離島の園児や生徒に対する支援措置  政令第116号/2016/ND-CPに代わる、少数民族居住地域や山岳地帯、沿岸部、離島の園児...

小学3年生から日本語を「第1外国語」に、全国の一部学校で (8日)

 石破茂内閣総理大臣のベトナム訪問に併せ、日本とベトナムは、ベトナムの普通教育機関における日本語教育に関する枠組み合意や、半導体分野における人材育成の協力覚書を交わした。  教育訓練省によると、...

©VIETJO ベトナムニュース 2002-2025 All Rights Reserved