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(本記事は、2016年10月25日付け「ベトナム株・経済情報」でプレミアム会員専用記事として配信されたものです。)
海外から様々なインスタント食品が輸入されるようになり、消費者は数多くの選択肢の中から選べるようになった。その一方で、健康志向の強いベトナム消費者の間では、インスタント食品が健康にあまり良くないという認識が広まっており、即席めんの消費量は減少傾向にある。そのため、国内の即席めんメーカーは現在、輸出を強化する戦略を取っている。
世界ラーメン協会(World Instant Noodles Association=WINA)によると、ベトナム人1人当たりの即席めん消費量は年間50~55食で、数年前に比べ小幅に減少。2015年におけるベトナム国内の即席めん市場の販売量は48億食で、2014年の50億食、2013年の52億食から徐々に減少している。ベトナムは即席めんの年間販売量は、◇中国:400億食、◇インドネシア:130億食、◇日本:50億食に次ぐ世界第4位。
即席めん市場の中でも、特に高価格帯製品の競争が激しくなっており、小規模企業だけでなく大手企業もシェア拡大で苦戦を強いられている状況だ。
例えば、国内即席めん市場でシェアトップの日系エースコックベトナムは、2012年にベトナムでの生産を開始したベトナム日清のノンフライ麺に対抗すべく、同じくノンフライ麺の「ミコチ(Mikochi)」ブランドを開発したが、消費者の嗜好は従来から慣れ親しんできたフライメンからなかなか変化せず、どちらもさほど大きな成果は出ていない。
エースコックベトナムでは、国内即席めん販売量が2年連続で減少しているが、日本や米国、カナダ、ドイツなどへのインスタントフォーの輸出量が大きく増えている。そのため同社は、インスタントフォーやインスタント春雨といった新製品の開発を強化し、国内に留まらず海外へと市場を拡大していく戦略を取っている。
同社は、世界の中でも生産コストの低いベトナムを主要な輸出製品生産拠点としていく方針。2016年上半期には、インスタントフォーやインスタント春雨などの計1億食を世界46か国に輸出した。同社は、ベトナムで主流の袋麺だけでなく、利便性と品質の向上を目指してカップ麺の開発も行っている。7月初めには真空凍結乾燥技術(フリーズドライ)を駆使したカップ麺「ハンディ・ハオハオ(Handy Hao Hao)」を発売した。
エースコックベトナムだけでなく、ベトナム日清も輸出を強化する戦略を取っている。日清もベトナムをノンフライ麺の主要な生産拠点としている。現在、同社の即席めん輸出量の70%がベトナムで生産されているものだ。
地場消費財大手のマサンインベストメントグループ[MSN]は、総人口2億5000万人の東南アジア諸国への輸出に注力しており、特にタイで最も歴史のあるビール醸造大手ブンロード・ブルワリー(Boon Rawd Brewery)傘下のシンハー(Singha)との戦略的提携を足がかりに、人口6500万人のタイ市場へアクセスできることで好調な輸出が見込まれている。
同じく地場大手のキドグループ[KDC]は、8万6000か所に広がる販売店網を駆使して新商品を販売することで、国内市場シェアの拡大を図っている。同社は現在、即席めん「ダイザーディン(Dai Gia Dinh)」及び「ダイザーディン・アンハオDai Gia Dinh An Hao」の2ブランドを展開している。
大手企業が高価格帯の即席めん市場で激しく競争している一方で、多くの企業は3500VND(約16円)以下の低価格商品の開発に注力していることから、この市場の競争も熾烈化している。低価格商品市場における各社の主要ブランドは、◇アジアフーズ:「ガウドー(Gau Do)」、「ハロー(Hello)」、◇エースコックベトナム:「ボンフオン(Bon Phuong)」、「ソードー(So Do)」、「ハオ100(Hao 100)」、「ドラえもん(Doraemon)」、◇KDC:「ダイザーディンアンハオ(Dai Gia Dinh An Hao)」、◇ベトナム日清:「ワサダ(Waxada)」、「ミー・コン・チェン365(Mi Khong Chien 365」など。
このほか、ビッグCのブランド「ウォウ(Wow)」など小売店が展開するプライベートブランド商品や、タイ、中国、シンガポール、香港などの輸入品がベトナム市場へ参入しており、ビフォン(Vifon)やコルサ・ミリケット(Colusa-Miliket)など地場老舗即席めんメーカーの市場シェアが日に日に縮小している。そのため、中にはプライベートブランド商品の加工生産へと転向せざるを得ないメーカーもある。