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雑貨店の若者との一幕
衣料品店や理髪店に交じって、他とは趣向がやや異なる雑貨店が1軒あったので入ってみた。籐のかごやトレー、陶製の茶器などが取りそろえられ、まるでベトナムの土産店にいるような感覚。床のタイルや商品のもセンス良く、温かみある照明で、陳列も分かりやすい。
ギフトショップのような雑貨店
店番をしていた若いベトナム人スタッフはベトナム語とドイツ語にのみ対応するようで、英語はあまり分からない様子だった。ベトナム人顧客に応対する一場面もあったが、ドイツ語が一番話しやすそうだ。それでも顧客からの質問には、懸命に答えようとしてくれる。一方的に売り込まない節度ある接客も含め、感じが良い店だった。
同店で小さな陶器の皿と、ミニサイズのベトナムの茶葉を購入。その際、スタッフがドイツ語で何かをしきりに伝えようとしていた。「毎度あり!」というより、ちょっとこちらの顔色をうかがうような雰囲気だ。その心を推し量ろうとするがやはりよく分からず、申し訳なかったが挨拶をして店を出た。
雑貨店で購入した陶器とミニお茶パック
それでも、若いスタッフが何を言おうとしていたのかやはり後々まで気になった。彼が口にした中で印象に残った単語をインターネットで調べ、懸命に推測してみたところ、おそらく茶葉が2つで3ユーロ(約510円)のところ、4つで5ユーロ(約850円)にするということだったかもしれないと気付いた。
ベトナムの市場で果物などを買う際、売り子に「本当は2個で5万VND(約270円)だけど、5個10万VND(約550円)でいいよ」などと言われ、つい予定より多く買い込んでしまうことがある。ベルリンの真っただ中で、ドイツ語を駆使する彼にこの商法で売り込みされるとは思ってもみなかった。とはいえ時すでに遅し。またドンスアン・センターに来た際、ぜひともこの店から茶葉2つ以上を買っていきたい。
ドイツでは、ベトナム系の店や人々が他国の店、物と共存していた。それでもベトナムというアイデンティティを失うことは決してなく、現地なりの根付き方をしている様子が印象的だった。ベトナム一色のチェコとはまた違った様相。同じ欧州の隣り合う国ですらも、地域によりまったく別の表情が見られる点が、ベトナム人街巡りの楽しさだと改めて感じさせられたドイツの旅だった。
【Text & Photo by T.Sasaki】