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薬剤師国家試験対策予備校の学校法人医学アカデミー薬学ゼミナール(埼玉県川越市)のグループ企業である株式会社薬ゼミ情報教育センター(東京都千代田区)は、ベトナム保健省およびハノイ薬科大学の協力要請を受け、7月からベトナムにおける薬剤師国家試験制度確立および薬剤師継続教育の質向上に関する支援を開始した。
この事業は、国立研究開発法人国立国際医療研究センターが主体となって実施する、厚生労働省より委託された「令和2年度 医療技術等国際展開推進事業」の一環として、2020年7月から2021年2月にかけて実施される。
ベトナムでは、副作用や耐性菌拡大の懸念から本来であれば医師の診断のもと処方されるべき医薬品が市中の薬局で入手可能であり、薬剤師による服薬指導が十分に行われていないため、薬物による重篤な副作用や抗菌薬の不適切な投与による薬剤耐性菌出現の懸念など、薬に関する健康被害が多いとされている。
また、医療従事者に対する国家試験制度が存在しないため、新卒の医療従事者の質が担保されていない。ベトナム政府はこれを問題視し、2020~2021年に医師国家試験および看護師国家試験を導入するための制度整備を進めており、薬剤師の国家試験導入や継続教育の質向上についても議論がなされている。
同じく薬剤師国家試験制度も存在しないため、薬学生は学部を卒業することで薬剤師の資格を得ることができる。ベトナムの薬学部は現在、1~3年制課程および5年制課程が存在するが、今後「薬剤師」と名乗れるのは5年制課程を卒業した者に限定されるなど、法整備が進められているものの、大学間における教育カリキュラム、卒業試験のレベルは統一されておらず、薬学教育における地域格差が大きいため、薬剤師の質にばらつきが生じていることも課題となっている。
薬ゼミ情報教育センターは、キルギスでの医療教育支援の実績や日本で40年以上にわたり蓄積した薬剤師国家試験に関する集合型教育、オンライン教室を介した遠隔教育のノウハウ、問題データベースを有することから、ベトナム保健省とハノイ薬科大学から協力要請を受け、薬学教育の質向上およびE-learning による教育の地域格差是正に取り組むこととなった。
同事業では、ハノイ薬科大学およびホーチミン市医科薬科大学と共同で大学カリキュラムを標準化し、教育内容不足部分のE-learningによる補完や国家試験のトライアルを実施することで、将来における国家試験開発の支援を行う。また、臨床現場の薬剤師に対しては、E-learningで病態・薬物療法の知識の講義を行い、医療教育の地域間格差是正に向けた取り組みを実施する予定。
ベトナム保健省はASEAN地域での医療系資格の相互承認を目指し、薬学部の6年制への移行や、薬剤師国家試験の創設を検討している。薬ゼミ情報教育センターは今後、同社が持つ経験とノウハウを活かし、ベトナムの医療水準の向上に貢献していきたい考えだ。