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ハノイ市ハイバーチュン区チエウベトブオン(Trieu Viet Vuong)通り27番地の路地の一角に、94年の歴史を有する老舗カフェ「カフェ・タイ(Cafe Thai)」がある。
カフェの看板には「4世代」を表す4つ星に、黄金の亀、コーヒーカップ、「CA PHE THAI」の文字、そして創業年を示す「1926」が描かれている。
グエン・ドゥック・ヒエウさん(男性・33歳)は、このカフェの4代目だ。ヒエウさんはかつてドイツに留学し、家業にも少し関係のある経済学を学んでいたが、母国に帰ってからはオフィスワーカーとして働き、月収も3000~4000USD(約32万7000~43万6000円)あった。しかし、30歳になったときにコーヒーこそが自分の情熱だと気付き、全てを捨てて田舎に帰り、農民となってコーヒーに関するあらゆることを学んだ。
ヒエウさんはこう話す。「タイ(Thai)は父方の祖父の名前で、曾祖父がそれを店名にしました。90年余り前、曾祖父は生計を立てるためにフンイエン省(北部紅河デルタ地方)からハノイ市に移り住み、天秤棒をかついで旧市街のあちこちでコーヒーを売っていました。当時、西洋の珍しい飲み物を安く売り歩いていた人は、おそらく曾祖父のほかにほんの数人しかいなかったでしょう。今のように氷やコーヒーメーカーもなかったので、曾祖父はいつも早起きしてコーヒーを瓶に入れ、薪で何度も沸騰させていました。90年も前に曾祖父が売っていたコーヒーの味がどんなだったかわかりませんが、きっと焦げたにおいで、今私が飲んでいるコーヒーとは全く違ったでしょう」。