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ホーチミン市10区グエンチーフオン通りには、毎日路上に腰掛けてケーキを売る盲目の男性がいる。11区に住むチュオン・ミン・クアンさん(66歳)は、目が不自由であるにも関わらず、20年ものあいだ「トゥン(thung)」と呼ばれる小麦粉と卵で作ったケーキを売り、病気の妻を養い一家の暮らしを支えてきた。
クアンさんは9歳の時、天然痘にかかり、その後遺症で失明した。かつて「不治の病」「悪魔の病気」と恐れられた天然痘にかかったことで周囲の人から差別を受け、クアンさんの少年時代は寂しいものだった。その後、妻のグエン・ティ・キウさん(68歳)と出会い、ようやく人生に転機が訪れた。2人は結婚して2人の子供を授かり、貧しいながらも幸せな毎日を送っていた。
生計を立てるため、クアンさん一家は故郷のメコンデルタ地方ティエンザン省を後にし、ホーチミン市へ引っ越した。クアンさんは宝くじ売りなど幾つかの商売を試みたが、盲目ゆえにしょっちゅうお金を騙し取られ、商売はなかなかうまくいかなかった。そこでクアンさん夫婦は、自分たちでケーキを作って売ることにし、今に至るまで20年ものあいだケーキで生計を立ててきた。